“若者のテレビ離れ”は本当なのか? 若者との分断を生む業界の構造

松本人志 

松本人志 画/彩賀ゆう (C)まいじつ 

インターネットの普及により、娯楽が多種多様になった現代。その影響から「若者のテレビ離れ」といわれて久しいが、本当に若者はテレビを観なくなったのだろうか。

ここ最近で平均世帯視聴率が10%を超えているバラエティー番組は、『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(日本テレビ系)や『ポツンと一軒家』(朝日テレビ系)、『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)、『ニンゲン観察バラエティ「モニタリング」』(TBS系)など。

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気楽に見られるとあって、幅広い世代がテレビで視聴しているのかと思いきや、実際のところは違うようだ。

「現代において、テレビをリアルタイムで視聴しているのは、高齢者層しかいないのが現状でしょう。2021年にNHKが実施した国民生活時間調査2020や日経クロストレンドの調査で、若者のテレビ事情が判明しています。これらの調査結果によると、若者のほとんどが日常的にインターネットを利用する一方で、テレビを見る時間は大きく減少しています。

高視聴率番組の『TVer』お気に入り登録者数を見ると『ポツンと一軒家』は16万人、『モニタリング』は29万人、『オモウマい店』は33万人程度。SNSで話題になる『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)は253万人、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)は221万人、そして『水曜日のダウンタウン』(TBS系)は312万人で、文字通り桁違いです」(芸能記者)

「夜ふかし」「イッテQ」「水ダウ」は、過激な演出がウリで物議を醸すこともしばしば。打ち切りも囁かされている。しかし『TVer』を使うような若年層からも人気を集めており、若者がテレビ番組自体に関心がないというわけではないのだろう。

「おそらく、若者人気の背景にあるのは、SNSで拡散された番組の切り抜き動画。著作権的にはアウトですが、面白い場面を切り抜いたショート動画が若者の興味をひき、『TVer』での見逃し配信視聴につながっていると思われます。TikTok上で番組名を検索してみると、『#月曜から夜ふかし』は1.2億、『#イッテq』は1.4億、『#水曜日のダウンタウン』は2.2億もヒットします。

一方で『#ポツンと一軒家』は120万、『#オモウマイ店』は220万程度しかヒットしません。一応『#モニタリング』は2億ヒットしますが、ジャニーズなどのアイドルが出演しているからだと思われます」(同・記者)

テレビ世代とネット世代で進む分断

切り抜き動画に加え、今の時代、テレビは見逃し配信、ラジオはタイムフリーサービスを使えばいつでも視聴できる。ポッドキャストなども台頭し、〝リアルタイム視聴〟の重要性は、完全になくなってしまった。では、バラエティー番組を継続させるカギはどこにあるのだろうか。

「番組ファンを囲い込むことが大切になってくるでしょう。すでに一部の番組では、ファンを囲い込むための動きが見られます。たとえば『アメトーーク!』(テレビ朝日系)は一歩先を行っており、『アメトーークCLUB』という公式ファンクラブを作って、会員限定コンテンツなどでファンの囲い込みに成功しました。

また『あちこちオードリー』(テレビ東京系)や『有吉の壁』(日本テレビ系)は、番組主導のリアルライブを開催。リアルで笑いを体験できるイベントで、コアなファンを獲得しています。

少子高齢化で、人数の少ない若者より、人数の多い高齢者層を狙って番組を制作するのは当たり前の時代へ突入し、だいぶ時間が経ちました。タイムパフォーマンスを重視する若者にとって、偏向報道の多いテレビ離れが進むのは当然。先のジャニーズ事務所を揺るがす性加害問題もテレビで取り上げられず、不満や疑問の声がSNSには飛び交っていました」(同)

テレビとネットによる情報の二極化や分断は進んでいる。「若者のテレビ離れ」と切り捨てる人たちは、どれほど現状を掴んでいるのだろうか。

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