早くも今年の邦画ベスト3確実の映画「犬猿」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『犬猿』

配給/東京テアトル テアトル新宿ほかで2月10日から全国公開
監督/吉田恵輔
出演/窪田正孝、新井浩文、江上敬子、筧美和子、竹内愛紗ほか

題名は“いぬざる”ではなく“けんえん”と読む。『犬猿の仲』のソレである。羨望、嫉妬、愛憎渦巻くうっとうしい関係の兄弟姉妹、その壮絶かつ笑えるバトルを描いて、最高に面白い。気の早い話だが、早くも今年のわが邦画ベスト3は確実、と“推し”を入れたいほど。

監督は『ヒメアノ~ル』(2016年)で『V6』の森田剛に連続殺人鬼を演じさせ、ド肝を抜いた吉田恵輔。今回もその“悪意”“手加減なし”は大いに健在。もう“面白凄い”!

印刷会社の営業マンで優しいけど実は姑息な弟・和成(窪田正孝)、対照的に刑務所帰りで凶暴なトラブルメーカーの兄・卓司(新井浩文)、さらに和成が仕事を頼む小さな印刷所を切り盛りする肥満体で見栄えの良くない由利亜(お笑いコンビ『ニッチェ』の江上敬子)と、ここで仕事を手伝っている要領も頭も悪いが、顔とスタイルだけは良い妹の真子(筧美和子)もまた対照的だ。この4人が恋愛感情、損得勘定入り乱れて、くんずほぐれつする修羅場を演じるわけ。本人たちには悲劇でも、傍から見ればほとんど喜劇、というのはよくあること。他人の不幸は蜜の味、とも言うしね。

 

ラストはハッピーエンドに見せ掛けて…

演じる4人はみんな素晴らしい適材適所ぶり。窪田クンもイイが、やっぱり新井浩文が圧倒的か。特にニッチェの江上敬子相手に、炒飯のお礼に一発? のシーンが笑える。『俺はデリヘル界じゃあ(BUSUでも平気の)“ノー・チェンジの卓司”って言われてんだ』と毒づくあたりがたまらない。あの目付きの悪い顔が効果的。江上はお笑い芸人だけあって達者なのは分かるが、意外な収穫は筧美和子。“胸がデカいだけで何もない”という妹役がハマる。筧本人はその設定に「マジで、ムカついた」そうだが、そのムカつきをバネに(?)この自己パロディー寸前の役を予想外に熱演。これまで演技未知数だったが、彼女“胸だけ”じゃないよ。若いころ胸だけ強調されたが、今や演技派の小池栄子や佐藤江梨子の領域を目指してほしい。

全編、悪態、罵倒の数々なのに、どこか爽快感があるのがお値打ちで、ラストもハッピーエンドに見せ掛けて…というサジ加減も絶妙だ。

日本映画で“トークバトル”力のある作品は少ないが、これは好見本。一見原作がありそうだが、監督(脚本も兼任)のオリジナル。人気小説やコミックス原作に頼りがちな日本映画の中でそれもまた素晴らしいこと。騙されたと思って観てください。

 

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