「仁義なき戦い」からまたひとり…川地民夫79歳で死す

作品目『仁義なき戦い』

東映/1973年
監督/深作欣二
出演/菅原文太、松方弘樹、渡瀬恒彦、金子信雄、川地民夫ほか

東映実録ヤクザ映画の金字塔といえば深作欣二監督による『仁義なき戦い』シリーズ(1973~1976年)というのが衆目の一致するところ。私を含めていまだに繰り返し何度もDVDを見ている輩が何と多いことか。配役の誰かが亡くなれば「追悼だ」と言っては見たりするわけだ。

近年、それが増えた。加藤武が逝き、菅原文太が亡くなり、松方弘樹が旅立ち、渡瀬恒彦が斃れ、そして今度は川地民夫の訃報に接したわけだ。2月10日、脳梗塞のため死去。79歳だった。酒とタバコを愛し、周囲の忠告も聞かず、それを貫いて79歳まで生きたのならむしろ本望、ある意味で立派と言いたい。逗子でバーを経営していたそうだが、一度行きたかった、って、生きてるうちに言えよ、行けよ、だね。自戒を込めて言いたい。

雑誌のインタビュー記事によると、当時の日活では石原裕次郎=タフガイ、二谷英明=ダンプガイなど“ガイ”が付くのがスターの証しだったそうで、「僕は何ガイですか、と幹部に聞きに行ったら“問題ガイだ”だって」と笑えるエピソードを披露していた。

湘南・逗子の裕次郎の隣家に住んでいたことが縁で、裕次郎の勧めで日活入り。アクション映画などで活躍するが、その後東映に移り、菅原文太と共演した『まむしの兄弟』シリーズ(1971~1975年)がヒットし、痩身の二枚目ながら三枚目も演じられるのが強みとなった。

 

欠かせなかった「外道なヤクザ」

同じく文太主演の『仁義なき戦い』第1作で、金子信雄扮する狡猾な山守親分の組員・神原精一を演じていた。冒頭では、闇市のガサ入れに乗り込む警察に抵抗して「こんバカタレ、ポリ!」と吼えていて大いに勇ましい。

出所した広能(菅原)を迎え、煙草をくわえさせ、肩を組み、仲の良いところを見せる。このあたりは『まむしの兄弟』の名コンビぶりを彷彿とさせるが、一方で“ミニ山守”的なズルさも持ち合わせるのが『仁義なき戦い』での役どころだった。

賭場の騒ぎで盆に散らばった札束を抱え込み抜かりなく確保したり、敵対の組に拷問され陰謀の内幕をあっさり白状して寝返ったり、無駄な抗争を誘発したり、広能を罠にかけ窮地に追い込んだりする。揚げ句、射殺されてしまう“外道な”ヤクザを熱演していた。

ところで『仁義なき戦い』シリーズの主要メンバーで、まだ生き残っている俳優は梅宮辰夫、小林旭、北大路欣也、伊吹吾郎、田中邦衛など数えるほどとなり、また追悼でDVDを見るのも何だかつらい、と思わせる川地民夫の訃報であった。合掌。

(映画評論家・秋本鉄次)

 

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