ラーメンを無性に食いたくなる映画「ラーメン食いてぇ!」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ラーメン食いてぇ!』

配給/ブロードメディア・スタジオ 3月3日から新宿武蔵野館ほかにて全国公開中
監督/熊谷祐紀
出演/中村ゆりか、葵わかな、石橋蓮司、片桐仁ほか

最近、日本の麺類をすする音に、一部の外国人が「うるさい」とか「マナーが悪い」とかブーイングしているそうだが、正直言って“ほっといてんか”だねい。これは日本の文化であり、作法なのだ。

海外でラーメンを食うときは百歩譲るとして、少なくとも国内でラーメン・日本そば・うどんを食うときは豪快に音を立ててこそ、ではないか。「郷に入りては郷に従え」ということわざもある。外国にも「ドゥ・イン・ローム・アズ・ローマンズ・ドゥ(ローマではローマ人のとおりにしろ)」って言い方があるゾ。日本人よ、堂々と豪快に音を立てて、ラーメン・日本ソバ・うどんを食おう!

そんな少々長いマクラを振って、ラーメン映画である。伊丹十三監督の『タンポポ』(1985年)など、日本の国民食ともいえるラーメンを題材にした映画は少なからずあるが、こちらは久々の本格派だ。

 

食いたくなるのはいい映画の証拠

自殺を図ろうとして邪魔が入ったラーメン『清蘭』の店主(石橋蓮司)、一方その孫娘(中村ゆりか)も自殺を図り、こちらは一命を取り留める。そのころ一方で、遠く中央アジアのキルギスでは遭難したラーメン評論家(片桐仁)が『清蘭』のラーメンを食べるまでは死ねない、と遊牧民に助けられ帰国する。いわば“死に損ない”の3人の“ラーメン愛”と名店復活を目指す作品で、これが意外や意外“フラッと入って美味かった店”的な満足感が味わえる。

現在朝ドラ『わろてんか』で人気の葵わかなは、中村ゆりかの親友で、食いしん坊の助っ人相棒をきっぷ良く演じている。葵が、ラーメンを音立ててザブザブ食べるシーンが実にセクシー。ラーメンの音にイチャモン外国人に見せてやりてえや。「能書き垂れてないで、温ったかいうちに食え!」とラーメン評論家を一喝するあたりもうれしい。食通よりも食欲だろ。メシなんて行儀よく食ってもウマかないんだよ。彼女あと数カ月でやっと20歳。少女は“アウト・オブ・眼中(死語?)”なので、一応成人を祝いつつ、あと5年寝かせてヨロシク、だよね~。

キルギス・ロケも本格的で気合が入っている。片桐がかわいがっていた羊が骨折して処分される。遊牧民たちは「しばらく肉食ってなかったから、いいタイミング」とあっけらかん。片桐も「ごめんね」と言いながら食して、泣きながら「うまい!」というシーンが素晴らしい。食いもの映画にちゃんと思想を与えている。

おおげさに言えば、ラーメンのどんぶりのなかには宇宙がある。なんてね。頑固一徹の石橋蓮司のラーメン作りも丁寧な描写で、なるほど納得。見終わると無性にラーメンが食いたくなるのは“いい映画”の証拠だ。

 

 

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