中国で起きている「権力者ファミリー没落」とバブル崩壊

(C)Patrick Wang / Shutterstock

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周恩来、鄧小平という中国革命元勲の末裔が、寒風の吹きすさぶ黄昏を迎えている。李鵬(故人)は、周恩来の義理の息子(養子)で、元首相や前全人代常務委員長(いわゆる国会議長)を務めた。

李鵬ファミリーは中国の電力利権を抑えていた。李鵬自身が水力発電の専門エンジニア上がりでもあり、中国の水力発電所におけるダム建設とその管理、そして石炭や重油を燃やす火力発電から近年は原子力発電に至るまで、あらゆる電気利権の元締めとして君臨した。

李鵬の娘である李小琳は世界的にセレブやキャリアウーマンとして知られている。何しろ彼女の肩書きは『中国電力国際発展有限公司』の董事長(理事長、代表取締役に相当)で、『中国電力新能源発展有限公司』の薫事長だった。

ところが習近平主席が権力を握るや、守旧派征伐の標的にされ、彼女は突然、片田舎のダムの所長のポストに“左遷”された。

息子の李小鵬も電力企業系列の董事長を務め“アジアの電力王”などと言われた。政界に転じて山西省副書記、省長となっていたが、2016年に交通運輸部長(閣僚級)に飛ばされている。

 

鄧小平の孫娘の夫は獄中に

鄧小平は遺言に「墓を造るな」と固く命じたことから遺灰を海にまいたが、遺族のほかに立ち会ったのは胡錦涛前主席だけだ。鄧小平は後世の報復を恐れたからで、中国では後世の権力者が墓を暴いて廃墟にするのは伝統である。

その鄧小平の孫娘と再婚したのが呉小暉で、彼は鄧小平の名前を利用して生命保険会社の『安邦保険』を巨大企業グループへと築き上げた。ニューヨークのウォルドルフアストリアホテルを買収し、トランプ家に食い込み、ニュージャージーに建設中だったトランプタワーの分譲部屋をまとめ買いした。だが、天文学的な債務超過を抱えたことから2月23日、倒産危機を回避させるため中国政府が救済に乗り出した。呉小暉CEO自身は2017年6月9日に国保険法違反で逮捕・拘束されており、現在は獄中で裁判を待つ身だ。

安邦保険は「too big to fail」(大き過ぎてつぶせない)――。バブル破綻で日本でも過去に山一証券救済やダイエーの救済買収があったが、それと似ている。中国経済をバブル崩壊に導く“千丈の堤も蟻の一穴から”か。

 

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