隣の部屋が事故物件だった!慰謝料請求はできる?

CORA / PIXTA(ピクスタ)

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新入生や新社会人は、そろそろ新居にも慣れてきたころだろうか。快適ならいいが、逆に「このアパート何か変」と感じた人がいるかもしれない。東京都内に住み始めた大学生のK君(19歳)はこう言う。

「住み始めて1カ月。隣室は空き部屋だけど、特に不審には思っていませんでした。でも先日、近所のコンビニの店員さんから、その部屋は1年前からずっと空き家のままだと聞いたんです。自殺があったらしい。僕はそんなことは知らずに入居したのだけど、それを聞いて以来、何となく気持ち悪くて仕方ない」

K君の隣の部屋は、いわゆる事故物件だったという話だが、不動産会社の法的義務はどうなっているのだろうか。不動産に詳しい都内の弁護士はこう話す。

「賃貸する部屋で自殺等があった場合には、宅地建物取引業者は宅建業法により、入居者に対して事前に告知しなければならないとされています。判例上も、自殺があった部屋を賃借して居住することは心理的嫌悪を感じる事柄であるから、賃貸人は、原則として、賃借希望者に対し重要事項の説明として自殺事故があった旨を告知すべき義務があると判断されています」

K君の場合、事故物件は隣室だ。しかし、隣室でも確かに気持ちのいいものではない。慰謝料もしくは別のアパート・マンションへの転居費用を請求することはできるのだろうか。

「自殺事故があったその部屋に居住することと、その両隣の部屋や階下の部屋に居住することでは、常識的に考えて感じる嫌悪感の程度にかなりの違いがあるといえます。判例では、その両隣の部屋や階下の部屋を新たに賃貸するにあたって、賃借希望者に対して自殺事故があったことを告知する義務はないとしています。そのため、告知しなかったことをもって義務違反を問うことはできず、慰謝料や転居費用を請求することもできません」(同・弁護士)

隣室ではだめだということだが、もし、告知されずに自殺事故があった部屋に入居してしまった場合はどうなるのか。

 

慰謝料請求する際のポイント

「そのような場合には、慰謝料や転居費用を請求することができるでしょう。告知すべきかどうかはケースバイケースで判断されることになりますが、判断要素としては次のようなものが挙げられます」(同・弁護士)

この弁護士は判断要素に4点挙げている。

  1. 事件・事故の重大性や異常性の程度
  2. 事故からどのくらいの年数が経過しているか
  3. 利用目的は居住目的か事業目的か
  4. 居住地域が都市部か地方か

なお、自然死の場合には告知義務が生じないとされているという。つまり、高齢者の孤独死や病死では告知義務はないということだ。それから、事故物件への心理的な嫌悪感は、時間の経過とともに薄まっていくと考えられるのが一般的だ。永久に賃貸人に告知義務を負わせるというのは、賃貸人にとって過大な負担になるからだ。

「大都市のワンルームで自殺事故があったケースで、2年間は告知義務があるとした判例がありますが、前述したいくつかの要素によってケースバイケースで判断されるため、一概には言えません。また、自殺事故のあとに新たな賃借人が居住すれば、その賃借人が極短期間で退去したといった特段の事情がない限り、その次の居住者(つまり、自殺事故から2人目の居住者)への告知義務はないとされています」(同・弁護士)

例えば、2016年の殺人認知件数は895件(法務省『犯罪白書』より)だが、判明しているだけで、1か月に75件近くの殺人事件が起こっていることになる。つまり、少なくとも毎日2件くらいは日本のどこかで殺人事件が発生しているという計算だ。

また、2016年中の自殺者数は21897人(厚生労働省HPより)で、月にすれば1824人、毎日約60人が自殺していることになる。自殺については、自宅を自殺場所として選ぶケースが約59%らしい。

毎年、すごい数の“事故物件”が新たに発生している可能性がある。

 

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