高齢者ドライバーの「責任能力」が悲惨を加速

老人 絶望

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高齢者ドライバーが引き起こす自動車事故の責任問題の深刻化が懸念されている。

自動車を運転していて交通事故を起こした場合、『刑事責任』、『民事責任』、『行政責任』、『道義的責任』という4つの責任を負うことになる。

死亡事故の場合は刑法に定められている懲役刑、禁固刑、罰金刑などに処せられることになるが、民事責任としては、被害者に対して慰謝料を支払う必要が出てくる。行政責任は、公安委員会による道路交通法違反に対しての処分で、具体的には、反則金の支払い、運転免許証の停止や取り消しなどだ。交通事故の補償問題に詳しい東京都内の弁護士がこう説明する。

「自動車事故によって損害が発生した場合、加害者が保険に加入していれば、保険金によって多くがまかなわれます。たとえ加害者に責任能力がなくても、自賠責は下りるとした裁判例もあり、加害者の責任能力に関係なく、保険金は下りると考えられます。交通事故のせいで仕事を休まざるを得なくなり、そのあいだに本来なら得られたであろう収入分は、休業損害として認められます。後遺障害のせいで交通事故前と同じように就労できなくなり収入が減った場合、その分も逸失利益として損害認定されます。また、後遺障害が認められると、傷害慰謝料とは別に後遺症慰謝料を請求することもできます」

最近では高齢者のドライバーによる交通事故が取り沙汰されることが多くなり、社会問題になっている。高齢者ドライバーは、認知症の疑いがある場合は特に、どの程度まで責任能力が追及できるのかという厄介な問題も絡んでくる。

「保険とは別に、加害者に対して民事上の不法行為責任を追及する場合、責任能力の有無が問題になります。民法では、精神上の障害で自分の行為の責任を認識できない状態にあるあいだに他人に損害を加えた者は、賠償責任を負わないとされているからです。一般的に民事上の責任能力とは、おおむね12歳程度の能力とされており、これと同等以上の能力があれば、自分の行為によって法的に何らかの責任が生じるということを判断し得るので、責任能力が認められます」(同・弁護士)

12歳程度の能力ということなので、認知症によって責任能力が否定されるのは、かなり病状が進行している場合だろう。普通であれば、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができる。仮に、加害者の責任能力が否定された場合でも、責任無能力者を監督する者、すなわち、加害者に後見人等がついている場合には後見人等、ついていない場合には家族などに対して損害賠償請求をすることができる。

 

高齢者ドライバーが起こした事故の実例

「高齢者ドライバーが起こす人身事故の問題の本質について、事故の被害者にとっては、ドライバーが何歳であれ不幸な出来事であることに変わりありません。もちろん、保険で補償も受けられるでしょう。しかし、被害者が子供で、重大な後遺症が残った場合、その子供は一生その不自由さを背負って生きていかなければなりません。加害者は道義的責任として、一生をかけて償うべきでしょう。しかし、ドライバーが85歳だったりしたら、年齢的に何カ月後かに亡くなっても不思議ではありません。誰がその子供に対して責任を負うのでしょうか」(全国紙社会部記者)

現実に、このような悲惨なケースは起きている。今年1月9日朝、自転車で登校中の女子高校生2名が乗用車にはねられ重体となった。ドライバーは85歳の無職男性で、自動車運転処罰法違反(過失致傷)容疑で逮捕された。その後、被害者のうち1名は亡くなっている。

加害者と被害者がその後どうなったのか不明だが、道義的責任は加害者の家族に重くのしかかるであろうということは容易に想像できる。

2016年末の運転免許保有者数は約8221万人で、このうち75歳以上の免許保有者数は約513万人(75歳以上の人口の約3人に1人)だ。2015年末に比べ約35万人(7.3%)増加し、高齢者ドライバー比率は今後も高くなると考えられる。

 

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