不倫、借金…競輪選手としてはい上がる中年男の映画「ガチ星」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ガチ星』

配給/マグネタイズ株式会社 新宿K’s cinemaほかで5月25日から公開
監督/江口カン
出演/安部賢一、福山翔大、林田麻里、博多華丸、モロ師岡ほか

戦力外通知された元プロ野球選手が、競輪選手として再起を賭ける話だが、スポーツ選手の単なるド根性映画の枠を越え、崖っぷちの中年男の生々しい肉声が聞こえてくるような“ガチ”の面白さが充満しており、予想以上に気に入った! 中高年必見である。

アラフォーの濱島(安部賢一)は8年前に、所属していた球団ソフトバンクから戦力外通知を受け、妻子とも別れ、生活はずっと荒れ、すさみ放題となる。そこで一念発起し、競輪学校に入学した彼だが、20歳ほども年の離れた若者たちに交じって行うその世界には凄絶なトレーニングとイジメが待っていた。しかし、同じくとり憑かれたように猛練習に励む同郷の久松(福山翔大)の存在を知った濱島は、次第に心動かされてゆく…。

 

次第に共感、応援したくなる「熱さ」

主演の安部自身が実際に売れない役者で、これが最後のチャンスとばかりに、主役に抜擢された“後がない”存在。これが“崖っぷち”中年男を演じるにピッタリのリアルさで迫ってくる。自堕落な横顔にも、必死の形相にも、待ったナシの説得力が生まれる。ボクはこの安藤の面魂が気に入った。

ここまで描写するか、というほど火の出るような、血を吐くようなトレーニング・シーンのハードさもいいが、個人的には自堕落な生活を送る前半シーンにも同等に思い入れてしまうね。故郷の北九州で、親友の居酒屋を手伝うこととなるが、パチンコや酒に溺れる日々…。そこまではまだ許そう。だが、この恩なる親友のカミさんに手を出しちゃあマズいだろうが、人の道として。最初はその人妻を強引に口説き、相手が寂しさからかソノ気になってからは、スエた匂いのする狭い部屋でのゲス不倫を繰り返す。相方の林田麻里が、ちょっとソソられる熟女なので、余計に背徳感が増す。完脱ぎとまではいかないが、汗が漂うようなワイセツ感を醸し出して、熟女ファンなら見逃せない。漫才コンビの『博多華丸・大吉』の博多華丸が、濱島を競輪選手に導くラーメン屋店主として助演している。

北九州・小倉は競輪発祥の地。この映画も元は、今回の江口カン監督がテレビ西日本で企画・監督した同名ドラマ(2016年4月放送)の映画版。不器用な中年男のもがき、頑張り。最初は共感度ゼロの男に次第に共感、応援したくなる。そんな“熱い”、しかし全くウソくさくない強烈なドラマの誕生を祝いたい。

 

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