余貴美子が妖艶な映画『榎田貿易堂』は魅力的な“脱力系”コメディー

映画『榎田貿易堂』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『榎田貿易堂』

配給/アルゴ・ピクチャーズ 新宿武蔵野館ほかで6月9日から公開
監督/飯塚健
出演/渋川清彦、森岡龍、伊藤沙莉、余貴美子、滝藤賢一ほか

映画『榎田貿易堂』は、群馬県にある開業4年目のリサイクルショップを舞台にした一風変わった群像ドラマ。近年活躍が著しい個性派男優、渋川清彦がやる気あるのかないのか微妙な店長を主演する。芸達者な新旧の顔ぶれと会話の妙による“脱力系”人間コメディーで、実に面白い!

それぞれに小さな秘密を抱えながら、リサイクルショップ『榎田貿易堂』は、店長の榎田(渋川清彦)、バイトの若い人妻・千秋(伊藤沙莉)、同僚の青年・清春(森岡龍)がおり、年増美人のヨーコ(余貴美子)、店長の幼なじみの旅館の跡継ぎの萩原(滝藤賢一)などが店に出入りしていた。平穏で、バカばかり言って、ヤッている日常が続く中、夏のある日突然、看板の“榎”の字の“夏”の部分がはげ落ち、“木田貿易堂”になってしまう。榎田はあぜんとなりながらも、「これは何かスゴいことが起こる予兆」とつぶやく。果たして、その言葉通りになるのだろうか?

 

あくまで軽妙に、軽薄に

登場人物ひとりひとりがちょっとネジの飛んだようなキャラが立っている。渋川らヤサグレ男女のじゃれ合い、おちょくり合いがサイコー。弁当買いに誰が行くとか、ドーでもいいようなことにこだわったりのバカな日常をダラダラと何日も過ごしたい、と想うボクとしては、何だか彼らが羨ましい。中でも一番ブッ飛びなのが、全裸も辞さずで、狂気の大熱演をした『ヌードの夜』(1993年)の“名美”以来、長年ご贔屓の余貴美子サマ。いやあ、大熟女になっても、セリフもスルこともあけすけで過激で参った、参った。全然円くなってなくて、エロいところが、彼女らしいね。

コインランドリーの裏部屋で、白昼、新しくくわえ込んだ中年男相手に立ちバックで激しくヤるシーンは、ペタンペタンと肌と肌が織り成す音までワイセツ。コインランドリーが“コ淫乱ドリー“になりそう(笑)。台詞も「いきなりフェラチオとかさあ」というセリフで、貿易堂の連中をのけぞらせる。最近はコ狡いエリート的なヤな男の役が多い滝藤賢一が、気のいい旅館の若旦那風キャラで新風を吹き込んでいる。

各々に人生の決断が迫られるのだが、そこを深刻に考えず、敢えて後回し感を醸し出したのは、今時逆に小気味よい。主要5人が群馬の名湯・伊香保温泉の階段に立ち、長回しのキャメラで捕らえる“これからドースル的”な会話の妙がこの作品のキモだろう。あくまで軽妙に、軽薄に、がうれしい。飯塚健監督も主演の渋川も同郷の群馬“ご当地映画”だが、まさにリサイクルショップで見つけたような“拾い物”、“お宝”のシャシンであった。

 

【あわせて読みたい】