黒木瞳と広末涼子に惑う中高年。映画『終わった人』のテーマは「卒婚」

映画『終わった人』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『終わった人』

配給/東映 6月9日より丸の内TOEIほかで全国公開
監督/中田秀夫
出演/舘ひろし、黒木瞳、広末涼子、臼田あさ美、笹野高史ほか

映画『終わった人』の原作は内舘牧子の同名小説で「定年って生前葬だな…」の一文が受けたりした。そんな定年小説の主人公を、サラリーマン・イメージ、たそがれイメージ希薄な舘ひろしに演じさせるというのは一種の“冒険”だろう。

『リング』(1998年)などホラー映画の巨匠のイメージの強い中田秀夫監督が、中高年ヒューマン・コメディーを撮るというギャップも注目したい。中田監督としては「これが本当に撮りたかった映画」なのだそうだ。

かつてはエリート・サラリーマンだったが、子会社に飛ばされてついに定年を迎え、毎日が日曜日の壮介(舘)。何もすることがなくグチばかりの夫に美容師の妻・千草(黒木瞳)は呆れるばかり。やがて、壮介は通い始めたカルチャー・スクールの受付嬢・久里(広末涼子)に想いを寄せるようになるが…。

いかにも予定調和で終わりそうな展開なのに、意外や意外の形で締めくくり、“終われない人”に送るエールにも無理がない。何より、すでに結婚して子供のいる娘(臼田あさ美)の方が頼もしく、夫婦まとめて一喝されてしまうシーンが、この手のホームドラマにおいて、実に新鮮だった。ここでキーワードとなるのは“卒婚”…なるほどね。中高年が身につまされること請け合い。

 

セクシーシーンが足りない!?

足りないのはエロスぐらいか。舘がオヤジ週刊誌の袋綴じエッチ・グラビアに悪戦苦闘したり、広末と出張先のホテルでムフフ…の想像シーンぐらいが関の山。そこで、黒木のエロスあふれる旧作が思い浮かんだ。『失楽園』(1997年)でもいいのだが、同じ渡辺淳一原作で映画初主演作の『化身』(1986年)が露出度イチバン。ナイスミドルの文芸評論家(藤竜也)と愛人関係となる銀座の新人ホステスに扮している。まだ宝塚退団直後だけに、映画の世界は未知数。演出のされるがままに大胆ヌードと激しいファックを披露してくれる。

監督が『サード』(1978年)、『マノン』(1981年)など“女優を脱がせる”才人・東陽一だけに、覚悟を決めたのだろう。スレンダーな黒木だが、“微乳派”にはたまらない慎ましい乳房。薄桃色の乳首を吸われて喘ぐ姿は生唾もの。また、語り継がれている屋形船のシーンでは、全裸にされてクンニ攻撃を受けてのけぞるし、騎乗位ファック・シーンでは自ら腰を揺すって、圧巻の一語だった。

このとき、黒木瞳、26歳。現在、57歳だが、まだまだその美貌は健在だけに、ここらへんでまたエロスお願いします、というのは無理な注文か。

 

【あわせて読みたい】