JR西日本「新幹線人身事故」におけるマスコミ報道の罪

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有名人の覚せい剤事件が起きると、テレビ画面では白い粉や注射器のイメージ映像が延々と繰り返し放送される。

「あの映像を見ると、せっかく自立中にもかかわらず覚せい剤への欲求が高まる人も少なくないのです」

このように「間違った薬物報道はもうやめて」と、専門家や当事者は声を上げる。いいかげんな薬物報道が、逆に覚せい剤患者の更生を妨げているという批判だ。

6月9日に東海道新幹線の車内で殺傷事件が起きた。その5日後の14日には、山陽新幹線『のぞみ176号』の先頭部分が大きく破損した上、人と接触した痕跡があると別の新幹線の運転手に指摘されて緊急停車するという人身事故が発生した。

マスメディアは両事件について《新幹線の安全性が揺らぐ》という表現を多く使って報道した。特に後者についての批判はこうだ。《ドンという異音がしたにもかかわらず、運転士は「小動物との接触」だと判断した》というものだが、この判断は正しい。

 

事故後のJR西日本の対応

東海道新幹線が1964年に開通する前に制定された『新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法(新幹線特例法)』という法律によると、新幹線線路内への立ち入りは厳格に禁止されており、違反した場合は5年以下の懲役または5万円以下の罰金という量刑も定められている。

しかも接触が発生した箇所、つまり高架橋からトンネルという区間で、駅からの距離も遠い場所において、人間が線路内に立ち入っているとは誰も想定していない。部外者の侵入現場は、例外的に立ち入りやすかったが、それでも周到に計画、準備しないと侵入はできなかった。

JR西日本に問題があるのは、先頭部分が破損していながら、そのことに気付かず小倉駅を出発したという点だ。とはいえこれらに関しては、鉄道事業者として反省、謝罪がされており、改善するとの方針が示されている。

新幹線を使った自殺というのは、経済的・社会的なダメージが大きくなるだけでなく、身元確認が難航したり、遺体の捜索活動も凄惨を極めるなど、絶対にあってはならないことだ。模倣犯を防止するという観点からも、今回の報道のあまりの多さ、おどろおどろしさは、問題の深刻さに比べてピントが外れているのではないだろうか。

 

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