「官能」で男を翻弄するフランス美熟女優を堪能できる映画『エヴァ』

映画『エヴァ』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『エヴァ』

配給/ファインフィルムズ 7月7日よりヒューマントラスト有楽町ほかで公開
監督/ブノア・ジャコー
出演/イザベル・ユペール、ギャスパー・ウリエルほか

イザベル・ユペールという女優をご存じか? すでに60歳半ばだが、トップ女優の座を今も不動にしているフランス女優。日本でいえば還暦遥かだが、円くなることなど微塵もなく、その美しさと危険なニオイは衰えることがない。褒め言葉として“一種のバケモノか”とうめきたくなるほど規格外れの女優なのである。昨年の『エル ELLE』しかり、2002年の『ピアニスト』しかり、アンチモラルなヒロインを演じさせたら、現状ではこのイザベルが最右翼だろう。

今回はその“決定版”とも言える刺激的な作品となった。『ミスブランディッシの蘭』などで知られる著名なハードボイルド作家ハドリー・チェイス原作の“悪女もの”だ。ジャンヌ・モロー主演で『エヴァの匂い』(1962年)の題名で映画化もされている。イザベルは「原作者は私のために書いたような気がする」と自信過剰ともいえるコメントを平気で出しているのもトップ女優の貫禄か。

 

イザベル・ユペールの「真髄」

他人の戯曲を盗み、自分の作品として出版し、一躍寵児となったハンサムな作家ベルトラン(ギャスパー・ウリエル)の前にエヴァ(イザベル・ユペール)と名乗る娼婦が現れる。その官能の魅力の虜となったベルトランは、次第に破滅の道へと歩み始める…。

冒頭で描写される不正を働いてのし上がった青年なんざ軽く料理するのは朝飯前。入浴シーンなどエロス描写はもちろんあるが、過去の作品で、ヌード上等、カラミオッケーの女優魂を披露したイザベルの割にはマイルドに終始する。その点を会見で映画記者に突っ込まれたときに、慌てず、怯まず、「それはあなたがエロスというものを正しく理解していないから。縫いでからむだけがエロスじゃないわ」とご高説をのたまった。確かに、間接的官能描写に終始するのだが、エロくないわけじゃない。脱ぎと無縁の女優が言うなら説得力がないが、これまでエロスの実績を誇る彼女が言うと、なるほどと思う。これがトップ女優の貫禄というものか。参った。“イザというときに飛ベル”からイザベルというのか、とボクは最近オヤジギャグ覚悟で自分を納得させている。

その証拠に、ベルトランの婚約者役で十分魅力的に映る若くてパツキンの美人女優ジュリア・ロイは、イザベルの前で一蹴される憂き目に。強い、強過ぎる。ラスト、唇に指を当てての“シ~”のポーズも見事にキマる。恐るべき女優=イザベル・ユペールの真髄をこの新作で確かめてほしい。

 

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