ワイセツかアートか?女性器に魅せられた「スティルライフオブメモリーズ」

『スティルライフオブメモリーズ』

 

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『スティルライフオブメモリーズ』

配給/オムロ 新宿K’S cinemaにて公開中
監督/矢崎仁司
出演/安藤政信、永夏子、松田リマ、伊藤清美ほか

一種の“女陰”フェチ映画とでもいうのだろうか。いまだに日本映画ではヘアのみ(それもナチュラル・ヘアで、性交中のソレはご法度という条件付き)で、女性器の露出なんてとんでもないわけだが、この映画のテーマは、自らのアソコを撮らせる女性と、それに魅入られてゆく写真家の話なのだから、邦画史上初かも知れない。

フランスの“女性器写真家”アンリ・マッケローニ(2016年死去、84歳)の写真集にインスパイアされた矢崎仁司監督が取り組んだ異色作で、さすが『ストロベリーショートケイクス』(2006年)、『無伴奏』(2016年)など禁断のエロスを描いてきたこの監督らしい着目ではないか。女性器は、ワイセツかアートか? 興味は尽きない。

新進気鋭の写真家・春馬(安藤政信)は、自分の写真展で出会った若い女性・怜(永夏子)から、(事情は)何も聞かない、ネガをもらう、を条件に「私の女性器を撮ってほしい」と依頼される。当初は当惑する春馬だが、山中のアトリエで、ソノ写真を撮り続けるうちに、女性器に魅入られるようになる…。

 

気品漂う映像美で切り取る「矢崎美学」

『キッズ・リターン』(1996年)などの安藤政信が久々に水を得た魚のようだ。写真家でもある彼にはピタリの役柄だし。ボクが魅了されたのは、相手役の永夏子だ。永と書いて“はる”と読ませる名前からしてミステリアス。肩幅のある大柄タイプの個性派メガネ美人で、美貌をメガネで少し隠し、女陰をさらけ出す、というギャップがまずエロい。

陽光こぼれる部屋で、椅子にM字開脚風に座り、徐々に股を広げてご開帳、写真家の接写を受ける。そのシャッター音は、見えない男根が突き刺さるような錯覚に陥るのか…。作家とモデルのせめぎ合いを気品漂う映像美で切り取る“矢崎美学”に惚れ惚れする。

小難しい横文字を弄すれば“エロスとタナトス”、死の匂いのする性、ってヤツか。水滴の音、桜や木立ちの奥行きなども併せて映像に収められる。そんな自然や風景と同じ美しさと輝きを持つのが女性器…あたかもそう言いたいかのようだ。春馬は自分がこれまで撮ってきた植物写真と女性器の関連性に気付いたりするしね。

彼女だけではなく、競うように裸身を披露する女優たちも神々しい。春馬の妊娠中の彼女役の松田リマも、寝たきりの母役の伊藤清美(かつてのピンク映画の名女優)も素晴らしい。逆に評論家・四方田犬彦氏のゲスト出演は少し鬱陶しい。まあ、原作者だから仕方ないのだろうが…。

 

【あわせて読みたい】