レイプ、殺人、マイナー種族…痛々しく生々しいアメリカの闇を描いた映画

映画『ウインド・リバー』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ウインド・リバー』

配給/KADOKAWA 角川シネマ有楽町ほかにて7月27日から公開
監督/テーラー・ジェリダン
出演/ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセンほか

当のアメリカ映画でもなかなか題材として選ばないのが、ネイティブ・アメリカン(ひと昔前まではいわゆる“インディアン”と呼ばれていた)のこと。その保留地を本格的にテーマとした作品はさらに少ない。その問題点にメスを入れた社会派シネマがコレだ。

アメリカ中西部・ワイオミング州にある保留地の雪深いウインド・リバーで、ネイティブ・アメリカンの女性の死体が発見された。第一発見者は野生生物局のハンター、コリー(ジェレミー・レナー)だった。この犠牲となった女性が、3年前に死亡した自分の娘の親友と分かり、彼は愕然とする。やがて、たった独りで現場に到着した新米女性FBI捜査官ジェーン(エリザベス・オルセン)が、この地の地理や事情に不慣れなので協力を求められる。

 

あくまで犠牲者女性に寄り添おうとするヒロイン

保留地でのネイティブ・アメリカン女性の失踪者(レイプなどの犠牲者含む)の統計は存在しない、というのだから驚きだ。FBIもそんなマイナーな種族の犯罪被害実態になんか興味が薄いという事実が、この映画の背景にある。今回だってひよっこのネーちゃんをたった1人だけ送ってお茶を濁そうとしていることでも明々白々。要するにここは“忘れられた土地”なのだ。

陽光照りつけるフロリダからおっとり刀で駆け付けたというこのパツキン捜査官オルセンがセクシー。いや、特に脱いだりはしない。むしろ着込む!「この極寒でそんな軽装じゃ死んじまうぞ」と脅され、ダサさ極め付きのババシャツにパッチに渋々着替えるおシャレ度ゼロのいで立ちが、逆にガテン美女好きの当方の血を騒がせるねえ。ケツは青いが、ハートは熱い彼女が地道に捜査を進め、真相に少しずつにじり寄る姿がたまらない。透き通った碧眼、ロング・パツキンが魅力的! フォローするレナーの頼れるオッさんぶりも素敵だ。ちなみに彼らは『アベンジャーズ』シリーズで“同じ釜の飯を食った仲”。2人の“化学反応”が映画の魅力を倍加させる。

痛々しく生々しいのは被害者女性のレイプ場面だろう。トレーラー・ハウスで恋人と逢瀬を楽しんでいたところを、鬼畜集団に襲われ、彼氏はなぶり殺しにされ、彼女も当然“輪姦”まがいの暴虐を受ける。命からがら雪の中を逃走するが、力尽き…。あくまで犠牲者のネイティブ・アメリカン女性に寄り添おうとするヒロインの姿に心打たれる。そして、レマーがみせる鬼畜野郎への“オトシマエ”にも溜飲が下がる思いだ。

 

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