米トランプ政権の「マジで中国が嫌い」を伝えない日本のメディア

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「ホワイトハウスからどの中国専門家、誰のところにも助言を求めたいという類いの電話が鳴らない」

これまで“パンダハガー”と称された米国内の中国専門家らは、こう嘆いているという。これはトランプ政権下のホワイトハウスに、中国の専門家がいなくなったことの証左だ。

同時にトランプ大統領の側近の中に、中国に融和的な人物はいなくなったということを意味している。政策立案の中心に立つのはジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官だが、その彼は対中政策において最もタカ派だ。

経済優先で中国に対して比較的中立とされたロス商務長官も北京を訪問し、高関税適用直前の直談判をしたが、米中の歩み寄りはなく会談は決裂している。

トランプ大統領への対中アドバイザーには、対中強硬論のチャンピオンと称されるナバロ教授がいる。そして国家経済委員会のトップはラリー・クドロー氏だ。クドロー氏は、かつて自由貿易派のエコノミストだったが、ワシントンを「反中国」の空気が覆い尽くすと、いつの間にか中国制裁論を声高に叫ぶようになった。

国務省高官は、次官クラスの任命がまだ行われておらず、ポンペオ国務長官はトランプ大統領の意をくんで動くので、国務省内のチャイナスクールは今や壊滅状態だ。

 

ウォール街を除く米国は嫌中一色

「象徴的なのがロバート・ダリー氏です。彼は外交官経験者で、親中派シンクタンクとして知られるウィルソン・センターの『キッシンジャー研究所長』を努めていますが、『中国擁護、友好派の主張がこれほど影響力を失ったことはなかった』(サウスチャイナ・モーニングポスト:2018年7月27日付)と、嘆きのコメントを出しています。こうなると中国友好派や対中貿易戦争反対を主張している中国専門家の居場所はどこにもありません」(在米日本人ジャーナリスト)

米国で唯一例外的な存在はウォール街だ。

「銀行・証券・保険系のシンクタンクやエコノミスト、アナリストの過半数が、まだ中国経済の幻想に酔い、対中貿易制裁は、経済成長にマイナスをもたらすので双方に良くないと主張しています。日本のメディアは、このウォール街発の論調を紹介することに偏っており、対照的にワシントンを覆う反中ムードには触れたがりません」(同・ジャーナリスト)

ところが経団連の夏の軽井沢セミナーでは、中国への警戒論が出まくったという。日本の財界もようやく中国の嫌らしさに気付いたのだろうか。

 

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