母と娘と料理人が織りなす、ごはん礼賛映画『いつも月夜に米の飯』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『いつも月夜に米の飯』

配給/SPOTTED PRODUCTIONS 新宿シネマカリテほかにて公開中
監督/加藤綾佳
出演/山田愛奈、和田聰宏、高橋由美子、小倉一郎ほか

語呂のいい題名に食指が動く。これはことわざで、電気のなかった時代、月夜や白米は貴重だったことから、不足のない生活、あるいは、それが毎晩続けば申し分ないが、なかなかかなわないことも意味するそうだ。これに対して「お天道様と米の飯は付いてくる」という言い方は、もう少し楽観的なのかもしれない。

米どころ新潟の小料理屋を舞台にした“ごはん礼賛映画”なのだが、“男出入り”の激しい母に反発す高校生の娘、という生臭い設定が調味料代わりとなっている。ヒロインの山田愛奈は『最低。』(17年)でAV女優を演じた成長株だ。ちょっとふて腐れた顔がなかなかチャーミング。小松奈々あたりのセンを狙えるぞ。ちなみに彼女はこの映画の舞台の新潟県出身で、好きな食べ物は“梅干し入りのおにぎり”だそうだ。親近感湧くね。他では“男出入り”の母親を演じる高橋由美子が“淫蕩な母”をあっけらかんと演じている。

東京で暮らす女子高生の千代里(山田愛奈)に、新潟で小料理屋を切り盛りする母・麗子(高橋由美子)が突然失踪したとの連絡が入る。渋々帰郷した千代里は、残された料理人のアサダ(和田聰宏)とともに、しばらくこの店で働くことになる。やがて、アサダや常連客とも打ち解け始めたころ、母が突然帰ってきて、ひと悶着…。

 

ただの「ごはん映画」ではない痛快さ

料理人アサダと母親が再婚する式をブチ壊す後半が予定調和をひっくり返して痛快。最後はチャッカリと“おいしいトコ取り”のヒロインの憎めなさにも唸ったね。加藤監督は調理師免許も持っている女性と聞いた。確かにのっぺい汁、おにぎりなど、出される料理は皆うまそうだが、ヒロインがおいしく食べるシーンが少ないのがタマにキズ。もっと“ごはんフェチ”とかの異色の女性像にするとかさ。せっかく“おにぎり好き”の新進女優を使ったのだから。思い切りパクついて、ほっぺに米粒の一つも付けてほしかった。

物足りない、といえばエロス描写もイマひとつ。冒頭間もなくカラオケ店で知り合った行きずりの男たちにマワされそうになるシーンや、母親が料理人と寝てしまうのを娘が目撃してしまうシーンとかは、もっと工夫が必要ではないか。最終的には料理人側から見れば“母娘どんぶり”なんだから、状況のエロさが画面からニオわない。

とはいえ、凡百の“ご当地映画”に比べれば、はるかにトンがっているのは何より。監督ももちろん新潟出身であり、この監督・主演の新潟コンビでもう一度“食い物映画”を撮ってほしい。次は山田愛奈が思いきり“食べる女”の役だと、オジサンはうれしいゾ。

 

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