エッチ地獄に墜ちたフィリピン若妻と四十路男の純愛『愛しのアイリーン』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『愛しのアイリーン』

配給/スターサンズ TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中
監督/吉田恵輔
出演/安田顕、ナッツ・シトイ、木野花、河井青葉ほか

題名は一見美しくかわいいが、中身は“人間の業”が充満し、修羅場を積み重ねていくような凄絶な映画でもある。『ヒメアノ~ル』(16年)で同情の余地のない連続殺人鬼を森田剛に演じさせ、今年の『犬猿』でも兄弟姉妹による壮絶な憎悪と葛藤のドラマを見せつけた吉田恵輔監督がまたやらかしてくれた。

田舎町のパチンコ店に勤務し、小うるさい母親・ツル(木野花)とボケた父・源造(品川徹)と暮らしている中年独身男・岩男(安田顕)は、職場の同僚でシングル・マザーの愛子(河井青葉)にフラれて家出。2週間後、即席のフィリピン若妻のアイリーン(ナッツ・シトイ)を連れて突然帰郷した岩男は、家族や周囲を呆れさせる。そして、母のツルは猟銃を持ち出し、アイリーンに迫るが…。

 

先の展開が全く読めない“ドロ沼”

こうして、文字通り暴発の連鎖は止まらず、四十路男とフィリピン若妻と狂気の姑とのバトルはドロ沼化してゆき、一方通行の“愛”やら“業”の着地点はどこなのか、先の展開が全く読めない。四十路まで少なくとも“素人童貞”であったろう岩男の屈折した性の意識を、個性派俳優の安田顕は、さすがの“憑依演技”で、いかにも地方都市にいそうな不器用で直情型の中年男を圧倒的存在感ってヤツで見せてくれる。女性のアソコを表す方言なのか、ゴが濁る“オマ○ゴ!”のセリフを連発し、フィリピン新妻や、職場同僚の熟女や、フィリピン・パブのママらとエッチするシーンが実に切なかったり、荒々しかったり…気持ちは分かる。分かるけどね。

私のご贔屓の熟女女優の一人、河井青葉がこのパチンコ店員のシングル・マザーで実は“ヤリマン”という設定の女性をエロく演じてソソられた。トイレでバックでイタすシーンのワイセツなこと。ヒロインのナッツ・シトイも巧演だが、驚かされるのは、通常はのどかな役柄が多いベテラン女優の木野花が、ここでは歪んだ母性のお化けのような母親像を“怪演”していること。フィリピン若妻に言葉が通じないのをいいことに、聞くに堪えない悪口雑言の極みをしばしば口にするあたり、スゴ過ぎる。劇中に登場するべっとり服に付着した血も、性交シーンで吐かれるゲロも、予想外の潮吹きも、そして「オマ○ゴ~!」の絶叫さえも、業として肯定したいほど。

岩男とアイリーンに愛のようなものが目覚め…事態は急速に好転してゆくのかと思いきや…一筋縄ではいかないのが吉田恵輔映画の常套だ。これぞ“おぞましいほど愛しい”と形容したい凄絶作!

 

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