盲目・美人妻のエロい開眼と官能の成長に戸惑う夫『かごの中の瞳』

『かごの中の瞳』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『かごの中の瞳』

配給/キノフィルムズ TOHOシネマズシャンテほかで9月28日より公開
監督/マーク・フォースター
出演/ブレイク・ライヴリー、ジェイソン・クラークほか

囚われの身という意味の“かごの鳥”を無理なく連想させる意味深な邦題にまずソソられる。ちなみに原題は『あなたしか見えない』で、こちらも意味深ではある。何より主演がパツキン美人のご贔屓女優ブレイク・ライヴリーなのだから、それだけで“買い”のヒューマン・ラブ・サスペンス。官能シーンもしっかりありますぞ。

子供のころ、交通事故で視力を失った女性ジーナ(ブレイク・ライヴリー)は、支えとなってくれた男性ジェームズ(ジェイソン・クラーク)と結婚し、子宝に恵まれない以外は幸せな日々を送っていた。やがて、彼女は手術で片方の視力を取り戻す。それは素晴らしい結果にも思えたが、視力回復が彼女の好奇心と冒険心を芽生えさせ、一方、夫は猜疑心と嫉妬心を増幅させ、ついに悲劇を迎える…。

冒頭から夫婦の営みが続く。ブレイクの乳首は見えそうで見えないのが残念だが、なかなかねっとり濃厚なカラミではある。このいきなりの描写からして、伴侶が障害者という設定のドラマにありがちな“夫婦愛”を描くというより、かなり“意地悪”な内容だと察せられる。監督もハル・ベリーがオスカーに輝いた辛辣な人間ドラマ『チョコレート』(01年)の才人マーク・フォースター監督だしね。彼の「以前から、独占欲が絡む男女の話を作りたかった」という言葉の回答がこの映画、というわけだ。

 

視力の回復とともに自我を解放させる演出

ところで、ヒロインのブレイクは、最初非パツキンで登場する。かつて『ザ・タウン』(10年)、『野蛮なやつら/SAVAGES』(12年)、『ロスト・バケーション』(16年)などではド・パツキンだったのに、ナゼ? と『パツキン一筋50年』という本も出しているほどパツキン女優好きの私としては不満たらたらだった。

しかし、これは作り手の周到な戦略であった。盲目時は、閉ざされた環境を象徴するかのようなダークな髪、視力を取り戻してから彼女は眩いパツキンに染め上げる。大納得。夫に見せても、相手は褒めもせず「驚いたよ」と答えるばかり。野暮だね。パツキン好きの私なら無条件で「ワォ、ブラボー!」と抱き締めたいほど(笑)。

視力回復によりすべてに積極的になってゆく美人妻。その象徴が、夫婦の営みにおける正常位の“受け身”から、騎乗位でリードする積極性にもうかがえる。“盲目の美人妻”から解き放たれる女性像を熱演したブレイクはやっぱり魅力的だった。男の独占欲と女の自我は永遠に相いれない、という、これは皮肉な大人の寓話でもある。

 

【あわせて読みたい】