エロスとカオス!『止められるか、俺たちを』ピンク映画にかけた青春

『止められるか、俺たちを』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『止められるか、俺たちを』

配給/スコーレ 10月13日よりテアトル新宿ほかで公開
監督/白石和彌
出演/門脇麦、井浦新、毎熊克哉、山本浩司、寺島しのぶほか

2012年に76歳で交通事故死した映画監督・若松孝二。高校2年で中退、家出して上京し、ヤクザになってケンカで逮捕され、出所後、心機一転し映像の世界へ。ピンク映画で一世を風靡し、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08年)など刺激的な作品を最後まで作り続けた異色の経歴の“鬼才”だった。そんな彼が興した『若松プロ』の“青春群像”を、当時は珍しかった女性助監督・吉積めぐみの姿を通して描いた実録作。今年は『カメラを止めるな』こと“カメ止め”が話題だが、同じ映画界映画ならこの“止め俺”を推したい!

1969年の春、21歳のめぐみ(門脇麦)は、新宿のフーテン仲間に誘われ、右も左も分からず『若松プロダクション』に飛び込む。当時の同プロは“ピンク映画の旗手”となった若松(井浦新)を中心に、新進気鋭の梁山泊でもあった。映画に魅せられた者たちの中で揉まれながら、めぐみは何も見いだせない自分に焦りを感じ始める…。

実在の人物・吉積めぐみを演じるご贔屓・門脇麦は、写真を見ると決して似てはいないが、オカッパ頭の雰囲気など、ああ確かに居たよな、ああいうコ、70年前後に…と思わせるから不思議だ。

 

ホロ苦い高揚感をかき立てる“青春映画”

足立正生、荒井晴彦、松田政男、大和屋竺、赤塚不二夫、大島渚など著名人や名物男が実名で登場し、若手俳優が演じている。わざと似てない人を選んだような配役の究極が、若松孝二とは風体が掛け離れた井浦新という大胆さ。それを平気でこなし、次第に雰囲気が似てくるのが井浦新の“役者力”の凄さ! 監督は春の衝撃作『孤狼の血』の白石和彌。実際に若松プロ助監督出身の彼としては“ここを通過しないと先に行けない”気持ちで撮ったのだろう。いつの時代にも必要な、ホロ苦い高揚感をかき立てる“青春映画”となった。

“自分の分身”だというヒロインのめぐみを門脇麦に演じさせたことで「普遍的な青春の蹉跌のようなものを表現できた」と監督は語っている。ホントにハマリ役で、同時代的にこのニュアンスは貴重である。そんな彼女が夜のプールに無断で忍び込み、オールヌードで泳ぐシーンが鮮烈だ。おっぱいが見えそうで見えたかな、みたいな撮り方も素敵だった。

“エロス”と“カオス”。そして、時として“死”もまた青春を彩る。吉積めぐみは71年9月、ウイスキーと睡眠薬を飲み、クーラーつけっ放しの自室で急死、自殺か事故死か今も判然としないという。ほんの2年半、『若松プロ』に“短くも美しく燃え”た女性助監督がいたことを記憶したい。

 

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