全裸!?の“裏ヒロイン”夏帆の艶演に注目!『ビブリア古書堂の事件手帖』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ビブリア古書堂の事件手帖』

配給/20世紀フォックス、KADOKAWA 11月1日より全国ロードショー
監督/三島有紀子
出演/黒木華、野村周平、成田凌、夏帆、東出昌大ほか

すでに電子書籍などが出回って久しいが、やはりあの紙の書籍のぬくもりというか、手ざわりというものは何物にも代え難い、と思う人は多い。中高年世代ならなおさらだろう。

そんな“本の虫”、とりわけ“古書マニア”の人々が泣いて喜ぶ(?)文学ミステリー。まあボクは、古書以上に週刊誌に愛着がありますが(笑)。監督は前作の『幼き子われらに生まれ』(17年)が良かった三島有紀子。

鎌倉にひっそりと佇む『ビブリア古書堂』。店主の栞子(黒木華)は、極度の人見知りだが、ひとたび本を手にすると、知識があふれ出し、鋭い推理力を発揮する。ある事情から本が読めなくなった青年、大輔(野村周平)が、祖母・絹子(夏帆)の遺品である夏目漱石の『それから』をこの店に持ち込むと、栞子はその本に記されたサインの真贋を解明し、絹子の50年前の“秘密の恋”を指摘する…。

 

“裏ヒロイン”夏帆の醸し出す儚さと強さ

ヒロインの黒木華は、華と書いて“はる”と読ませる。そこにフェイントを感じさせる女優だと思うが、昭和っぽい、割烹着や女中が似合う真面目イメージが強い。生まれは平成なのにね。『永い言い訳』(16年)では不倫する編集者を演じ、本木雅弘と絡んでいたのが珍しいくらい。だから、今回の役にはピッタリなのだが…。素顔は「(役の上での)女中歴、長いですから」と自虐コメントをしたり、けっこう面白い人らしいので、もっと悪女な彼女を見たい。で、ボクはやはり、50年ほど前の“秘密の恋”の絹子を演じる夏帆の方に、テレビ・シリーズ『みんな!エスパーだよ!』(13年)のころからご贔屓なので、惹かれる。『ピンクとグレー』(16年)や今年の『友罪』などでかなり際どいエロいシーンも演じているし。

今回も“実質ヒロイン”、“裏ヒロイン”と言いたいほど。生前の絹子が大切にしていた古書には彼女が死ぬまで守った秘密があった。64年の東京五輪の年、鎌倉で夫と食堂を営む絹子の前に、作家志望の嘉雄(東出昌大)が現れ、やがて人目を忍ぶ仲となるのだ。1冊の本を2人で読むことで距離が縮まってゆくプラトニックなシーンもいいけど、ボクは正直言って、具体的、即物的な愛欲シーンが見たい。旅館での逢瀬、2人が静かに接吻をし、やがて夏帆が全裸とおぼしき姿…に、つい身を乗り出す。「太宰みたいに、一緒に死んでくれ」という男の横っ面をはたき「生きていましょ」と言う夏帆に惚れ直した。女性の儚さ、強さを彼女はいつも醸し出す。

古書という小宇宙を巡る好奇心の旅は、2つの時代を往還しながら、ほろ苦く醸成されてゆく…そんな味わいの好編であった。

 

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