十朱幸代「完脱ぎ」赤裸々な自叙伝出版の大女優35年前『魚影の群れ』

作品目『魚影の群れ』
松竹 1983年 DVD発売中
監督/相米慎二
出演/緒形拳、十朱幸代、夏目雅子、佐藤浩市ほか

ベテラン女優の十朱幸代が先月下旬、都内で初の自叙伝となる『愛し続ける私』の出版イベントを行った、と報じられた。

注目はかつて結婚寸前までいったほどの“13歳年下の恋人”だった歌手・西城秀樹(享年63)について。著書では名前こそ伏せてあるが「婚約発表を1週間後に行う準備をしていた」そうだ。恋の芽生えから、お忍び旅行まで赤裸々につづってある。

それはそれで興味も湧くが、十朱幸代といえば、エロス方面で思い出されるのは何と言ってもこの作品だろう。彼女にとってはおそらく唯一最大の“完脱ぎ”映画ゆえに“お宝度”も高いし、『セーラー服と機関銃』(81年)などで鬼才と呼ばれた相米慎二監督作品としても注目されたものだ。

本州最北端、下北半島の漁港・大間で、房次郎(緒形拳)は長年マグロ漁に取り組んできたベテラン漁師。家出した妻のアヤ(十朱)に代わって男手ひとつで育てた娘トキ子(夏目雅子)が「結婚したい」と言い出し、恋人の俊一(佐藤浩市)に会わせられるが、房次郎の不機嫌は募るばかりだった…。

 

夭折した出演者の分まで“生き続ける私”

ここで家出妻を演じる十朱は当時アラフォー、四十路の熟れ熟れ年齢。それまで清純派やしっかり者の主婦役などが多かったが、ここでは、20年前に子供を置き去りにして家出し、ヒモを作って北海道などを流転していた奔放な女性像という新境地に挑んだ。その熱演ぶりは、濡れ場、カラミにも如実に表れる。北海道で偶然再会した彼女と夫。長い歳月がわだかまりを解くのか、漁船の中で超久しぶりに“夫婦の営み”に至るのだ。

まず久々に夫の分身を確かめるようにフェラ・モードから始まり、頃はヨシ、とばかりに緒形拳(名優の彼は名うての“濡れ場巧者”でもあった)が正常位で分け入り、十朱はハアハアと声を荒げて吐息を漏らす。そして暗がりの中に浮かび上がる豊満な乳房が圧巻だ。やがて、十朱は攻守ところを変えて、今度は私が存分に楽しむ番、とばかりに騎乗位でズンズンと腰を律動し、イッてしまう。このシーンは一番のハイライト! もちろん、マグロ漁のシーンはドキュメンタリー映画か、というぐらい迫真力に満ちているのだが…。

監督の相米慎二は50代で、夏目雅子も20代の若さで逝ってしまい、緒形拳も、主人公の友人役で出演している三遊亭円楽(先代)も、近年相次いで亡くなっている。十朱幸代は今でも容色にさほど衰えもなく元気だ。ぜひ彼らの分まで“生き続ける私”であってほしい。

(映画評論家・秋本鉄次)

 

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