北朝鮮では『セールスドライバー』が子供たちの「憧れの職業」なワケ

画/彩賀ゆう

国連が実施中の対北経済制裁には3つの「限界」がある。第一に国連レベルの対北制裁は、選択的な制裁だということだ。北朝鮮が大量殺傷兵器を開発できないよう、貿易と金融取引を制限しているが、実態は民生と関連した貿易や金融取引は除外されているのである。

北朝鮮はすべての対外関係を公共機関が行う。軍事向けの取引でも、自ら民生用の取引へと操作できる。

国連による2270号が発効してから、中国政府は初めて独自的な制裁案を発表した。北朝鮮産の石炭を輸入する場合、中国の輸入業者が民生用取引であることを証明するようにしている。中国企業からすれば不便なことだが、北朝鮮側が協力さえすれば、民生用取引として証明することはそれほど難しくはない。

他にも、特定人物や機関に対する活動制約に関する制裁などがあるが、これらは象徴的な制裁にすぎない。国連制裁で北朝鮮には多くの不便さが生じてはいるものの、決定的に不自由にさせる制裁は米国による包括的な制裁のみだ。

 

手っ取り早く転売ヤーになれる

そんな北朝鮮で、今、子供たちが最も憧れる職業は何か。食べ物が自由に手に入る漁師? 貿易商人? それとも核物理学者? 日本と同じように医者? もちろん「特権的な地位」に憧れがあるのは間違いないが、金正恩党委員長に近ければ近いほど粛清の憂き目に遭う可能性が高くなるから、ほどほどでなければならない。こうした「ほどほど層」は国民の25%程度といわれる。

北朝鮮で「特権的」と考えられている仕事は、ドルやユーロなど信用性の高い外貨を手にすることのできる外交官や諜報員、通商代表部の職員だ。しかし、こうした職業に就けるのは、ほとんどが上層階級の子息で、つまりは世襲だから99.9%の庶民にとっては手の届かない職業だ。

北朝鮮の為替相場を見ればすぐに分かるが、「ぱっとしない収入」を外貨で得る方が、「まずまずの給料」を北朝鮮ウォンでもらうよりも、はるかに価値がある。

従って賃金が外貨で支払われる「出稼ぎ労働者」になるという手もある。給料はピンハネされるから「現代の奴隷」ともいわれるが、海外に出られるのは労働党員でなければならない。となれば25%の中でも上位者でなければ海外には行けない。つまり外貨で「ぱっとしない収入」を得ている階級である。

現在、憧れの職業は「まずまず以上の北朝鮮ウォン」を稼げるドライバーだ。北朝鮮では移動の自由が厳しく制限されており、一般の国民が自分の住んでいる市や郡から出るのは難しい。

「北朝鮮で居住地以外に行くには、かなりの書類手続きに加えて、袖の下が必要になりますが、運転手は通常、北朝鮮中を問題なく移動することができますから、地域間の価格差を利用した転売でひともうけするチャンスが転がり込んでくるのです。加えて、通常の乗客や闇物資の移送の片棒を担ぐことでも稼げますから、結構な収入になるのです」(北朝鮮ウオッチャー)

かつては日本でも、セールスドライバーは過酷だが高給といわれた。小金を貯めて事業に乗り出した者もいる。ワタミ創業者から参議院議員になった渡邉美樹氏などはその代表だ。

ただし北朝鮮では、ドライバーが国会議員になることは100%ない。

 

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