難民問題の裏で急増し続けている「密入国ビジネス」とは

麻薬の場合は、例えば取引中の品物が行方知れずになれば、誰かがその代金を支払わなければならない。だが、密入国を企てた移民の海に落ちて大半が死んだとしても、密輸業者が金を失うことはない。前金ですでに代金を受け取っているからだ。積荷は人間だから、船が沈んでも密輸業者の損失は最小限に抑えられる。

「ビジネスですから、利益を上げるために廃船寸前の船を使う。漂流したところで、欧州当局が捜索や救助を行うと当て込んでいるため、給油も適当です。イタリア海軍は2013年後半からの1年間で、約15万人を救助しましたが、財政難に陥ったため、2014年後半から難民・移民・密入国者の救助作業を停止しています」(軍事ジャーナリスト)

欧州刑事警察機構(ユーロポール)によると、密入国ビジネスで動いた金額は30~60億ドルに達している。これらの資金は、一足先に亡命して移民となった親族が、亡命を企図する家族などを助けようと世界各地から送ったもの。仲介しているのは密入国ネットワークだ。

シリアや中東、北アフリカからの亡命者の橋頭保であるイタリアや、欧州連合(EU)の当局が公表した資料から、これら地域と欧州の間で入念に築かれた密入国システムの詳細が浮かび上がってくる。