「レズ」「AV」「乱交」…殺された女にまつわる『青春挽歌』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『チワワちゃん』

配給/KADOKAWA 新宿バルト9ほかで全国公開中
監督/二宮健
出演/門脇麦、成田凌、寛一郎、玉城ティナ、村上虹郎、浅野忠信ほか

原作は岡崎京子のコミックス。近年、沢尻エリカ主演で『ヘルタースケルター』(12年)が、二階堂ふみ主演で『リバーズ・エッジ』(18年)が映画化されている。偶然なのか、主演女優が2人とも“完脱ぎ”している。そして、これが3本目だが、いずれも一筋縄ではいかない“岡崎ワールド”の屈折性を孕んで、若い世代の“精神の漂流”、あるいは“裏と表”を描いてきた。今回は“チワワちゃん”と呼ばれ、本名も知らなかった女性が突然殺されたことによって、残された仲間のウワサや証言から、彼らの“青春の傷痕”を浮き彫りにしていくという、実に“毒”のある問題作に仕上がった。

東京湾でバラバラ殺人事件が発生し、まもなく被害者の身元が判明するが、被害者は一時人気モデルとなった通称“チワワちゃん”(吉田志織)と呼ばれていた若い女性だった。かつて毎日のようにツルんでいた仲間のミキ(門脇麦)らが、彼女を偲んで集まるが、語る者によって全く印象が違う“チワワちゃん”…。

すでに死者となった人物を周辺の者たちが語る、というとまるで落語の『らくだ』の世界だが、こちらは登場人物がほとんど今時の若者。原作は1994年発表だが、SNSが急激に発達した現在に合わせて、彼らの恋や嫉妬、お金や欲望に対する素顔を浮き彫りにする。無軌道で、その場限りの衝動に駆られて起こす“若気の至り”ってヤツはいつの時代でも共通分母なんだな、とつくづく思うね。

 

どこか懐かしく、愛着を感じる通過儀礼

若い彼ら、彼女らが行きつけのミュージック・バーで出会って、飲んで、タバコ吸って、セックスして、の日常と、政治家に届ける裏金600万円をひょんなことからパクり、それを3日で使い切る非日常が描かれる、その中で、浮かんで消える“チワワちゃん”のジェットコースター的刹那の人生。目まぐるしく動き回るカメラと極彩の色使いに、平成生まれ(91年)の若い監督らしい感覚が宿る。

門脇麦は昨年の『止められるか、俺たちを』では伝説の“若松プロ”で女性助監督だった実在の女性に扮したが、今回は、チワワちゃんのことを語るメインの人物を演じている。彼女が出ると青春映画にヒリヒリとした“火傷感”みたいなものが生まれるのがイイ。

一方、チワワちゃんを演じた吉田志織はまだ21歳の新進だが、レズや乱交シーン、果てはB93の触れ込みでAVに出ちゃうなどの、物おじしない“不思議少女”をハダカも辞さずで熱演している。

中高年世代にも、どこか懐かしく、愛着を感じる通過儀礼が奏でられて何より。“R-15指定”で描かれた“青春挽歌”である。

 

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Vic Helian / Shutterstock

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