制服フェチ!?ナチス脱走兵の乱痴気エロス『ちいさな独裁者』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ちいさな独裁者』

配給/シンカ、アルバトロス・フィルム 新宿武蔵野館ほかで公開中
監督/ロベルト・シュバンケ
出演/マックス・フーバッヒャーほか

浜の真砂は尽きるとも、ナチス秘話もののネタは尽きまじだが、また“新しい視点”の作品が現れた。脱走兵が制服を拾ってナチス高官に化け、その制服の威光をかさにかけ、権勢を振るい始めるというこの皮肉な寓話めいた話が、何と“真実に基づく”とは!

そこが一番興味を抱かせる点だ。シュバンケ監督はドイツ出身だが、ジョディ・フォスター主演の『フライトプラン』(05年)でハリウッド進出を果たし、他にブルース・ウィリス主演の『RED/レッド』(10年)なども手掛けている。娯楽大作も得意だが、今回のように、祖国の歴史の暗部にもスポットを当てることも忘れない。

大戦末期のドイツ。敗色濃厚の中、軍規は乱れ、脱走兵が続出していた。ヘロルト(マックス・フーバッヒャー)もその1人で、道端に打ち捨てられた軍用車両の中で軍服を発見。それを身に着けナチス高官に成り済ます。総統の極秘任務とウソを言い、道中出会った兵士たちを服従させ“親衛隊”を組織する。こうして巨大な権力を偶然握った名もなき脱走兵は傲慢な振る舞いを加速させてゆく…。

 

人間の“制服コンプレックス”を浮き彫りにする

邦題に“ちいさな”とあるので、子供の話かと早合点しそうだが、大人のお話です。念のため。まあ、この主人公の場合、突然高価で危ない玩具を手にした子供レベルなのだが、それとも“小物の”という意味も含むのだろうか。いずれにしても、いかに人間が、制服、肩書、レッテルに弱いかということを、戦時下という極限状態の中で浮き彫りにしてゆく。基本善人でも、なまじ権力を持つと暴走するという教訓はいつの時代でも通用する。ラストでこの“親衛隊”を現在のドイツに出現させ、蛮行、狼藉を行う映像がそれを物語っている。近年の“揺れるヨーロッパ”の行く末をこの監督は見据えているのだろう。後半は、軍規違反のドイツ軍兵士を収容する施設で全権を握り、片っ端から囚人を大量虐殺してゆく“暴君”となる主人公。まかり間違えば自分が処刑される側だったにもかかわらず、そんな感覚が平気で抜け落ちてゆくのが、人間の怖いところだ。

エロス面でも暴虐を振るうこの“虎の威を借るキツネ”野郎。占拠した町の娼館で乱痴気騒ぎをするのだが、ある娼婦と、さあ熱戦の部下を引きはがすようにして横取りするあたり“小物感”たっぷり。その娼婦の巨乳が眩しい。こうして痴宴は果てしなく続き、まるで巨匠ルキノ・ビスコンティ監督の『地獄に堕ちた勇者ども』(69年)を彷彿とさせる(そこまで立派じゃないけど)。そんな下世話な興味を駆り立てつつ、人間の“制服コンプレックス”を描いて秀逸!

 

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