『翔んで埼玉』~二階堂ふみとGACKTの〝ボーイズ・ラブ〟もある痛快〝社会派風〟話題作~

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『翔んで埼玉』

配給/東映 丸の内TOEIほかで全国公開中
監督/武内英樹
出演/二階堂ふみ、GACKT、伊勢谷友介、京本政樹ほか

「埼玉県民はそのへんの草でも食ってろ!」とパツキンの二階堂ふみが初の男役でホザくテレビCMも話題となっている奇想天外〝埼玉ディスり〟コメディー。埼玉に限らず、関東首都圏各県同士の対抗心、自虐ネタなどが〝ケンミンSHOW〟的番組などでも盛り上がっており、ボクも楽しんでいる1人なのだが、そんなブームの元祖のような魔夜峰央の同名コミックスが原作だ。

架空の日本。埼玉県民は東京都民から迫害を受け、通行手形なしには東京に入れないほど。東京都知事の息子・百美(二階堂ふみ)は米国帰りの謎の美男転校生・麗(GACKT)と出会い、惹かれ合う。だが、麗はこの悪しき現状に革命を起こそうとする〝埼玉解放戦線〟のメンバーだったのだ…。

 

実は〝埼玉リスペクト映画〟なのかも

かつては〝ダサイタマ〟と呼ばれておちょくられていたし、現在は〝自県愛全国最下位〟なのが埼玉だそうだ。たが、それでも鷹揚なのが埼玉県民、と原作者は語っており、だからこの話が成立したという。「これが〝翔んで京都〟じゃシャレにならない」とも。それは言えるし、行きつけの呑み屋のおネーちゃんで、生まれも育ちも埼玉のコが「そうよね。埼玉県人はあまり怒らないし~。だから『翔んで埼玉』、絶対見たい!」とリサーチしてました。一見〝埼玉ディスり映画〟に見えて、実は〝埼玉リスペクト映画〟なのかも。

それゆえに、パロディーとはいえ、あまりに無茶な設定とエグいディスり用語満載で大丈夫か? なんて心配ご無用。これは予想以上に〝拾い物〟で、中高年世代でも〝ケンミンSHOW〟感覚で楽しめること請け合い。武内英樹監督作としては『テルマエ・ロマエ』(12年)より、〝架空の日本を舞台に徹底的にディスられる埼玉県民〟というナンセンスな笑いの質が、個人的にははるかに身近で好きだ。都知事の息子(!)の超エリートを演じる二階堂ふみがパツキン・ボブも華やかに男役を演じ、GACKTとともにロミ・ジュリ境遇の〝ボーイズ・ラブ〟風に見せるあたりの倒錯感はかなりの珍味! 後半は世にもばかばかしい〝関東大戦争〟に発展するのだが、県境の川を挟んで対峙する2つの陣営が〝カード対抗戦〟のように、自県出身の有名人合戦するあたりのギャグが最高。トドメの〝世界埼玉化計画〟には笑ったね。パート2を期待したい。

深読みすると、これは現代の根深い差別構造を鋭く撃つ〝社会派映画〟でもあるのだが、まずはバカ笑いしてから考えましょうや。

 

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