『歯まん』~“局部を食いちぎるアソコ”を持つ女子高生の切ない彷徨~

歯まん

(C)まいじつ

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『歯まん』

配給/アルゴ・ピクチャーズ アップリンク渋谷ほか全国にて順次公開
監督/岡部哲也
出演/馬場野々香、小島祐輔、水井真希、中村無何有、宇野翔平ほか

面妖な題名に、まさに面食らうが、〝相手の局部を食いちぎるアソコ〟を持つ女性がヒロインだから、そのものズバリということになる。ここで、嫌悪感より興味津々が先に立ったらシメタもの。ボクはもちろん食い付くタイプです。冒頭から血飛沫たっぷりだが、スプラッタ・ホラーというより、ダーク・ファンタジーと呼べそう。

女子高生・遥香(馬場野々香、現・前枝野乃加)は、初めてのセックスの最中、相手を殺してしまう。何と自分の肉体の変化で、恋人の局部が食いちぎられていたのだ。家族、友人、誰にも言えない不安と孤独の日々が彼女の心を徐々に蝕んでゆく。そんなとき、遥香は1人の男性と出会うのだが…。

“歯まん”ではないが、セックスすると豹に変身し、相手を食い殺してしまう若い女性を描いた作品では、ナスターシャ・キンスキー主演の『キャット・ピープル』(81年)を想起してしまった。人を究極に愛することは、相手を傷つけることと見つけたり、を“歯まん”という設定で象徴的に描いている。一見グロに映るが、そこから、地獄のようなロマンチシズムが醸し出される。全篇血飛沫の中、ヒロインのリミッターを振り切った熱演が感動的。相手を肉体的に傷つけないようにセックスができるのか、けっこうスリルとサスペンス。荒っぽいホラー調に見えて、実に繊細!

 

『カメラを止めるな!』レベルのヒットに?

「イチかバチか体当たりでぶつかった」と語るこの馬場野々香は、今年29歳なのに、ぬけぬけと女子高生を演じている。さすがにちょっと無理っぽいけど、まあご愛嬌ということで。初体験という役柄だから10代設定でも仕方ないのかもしれないが…。改名したそうだが、この作品で主演したことを誇りとして、糧にして、今後も頑張ってほしい、とエールを送りたい。

これが長編デビュー作の岡部哲也監督が、近年、日本の若手作家が避けがちな性(生)と愛のテーマ、加えて性描写にも真正面から取り組んでおり、立派の一語。映画って最終的には、非日常の刺激を暗闇の空間で楽しむもの、というボクの気分にも合致している。

それにしても、〝歯まん〟という妙な語感はインパクト十分。ボクの頭の中で、今でもビビビと鳴り響き、クセになりそう。昨年はマイナーな『カメラを止めるな!』が異例のメガヒットを記録したが、今年は〝カメ止め〟に負けじと〝歯まん〟がまさかのクチコミ大ヒットすることを夢精、じゃなかった夢想したい。

 

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