“R15”で注目された阿部純子のナース姿がたまらない!『ソローキンの見た桜』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ソローキンの見た桜』

配給/KADOKAWA 角川シネマ有楽町ほかにて全国中
監督/井上雅貴
出演/阿部純子、ロデオン・ガリュチェンコ、イッセー尾形ほか

阿部純子といえば、R15指定の『孤狼の血』(18年)で松坂桃李とからむ薬局店員の役で〝いい女だなあ〟と注目されたが(ボクもその一人)、まだまだ知名度は全国区にあらず。そこで、この新作は堂々主演でブチかます。おまけに日露合作の巨編で、ラブ・ストーリーの実話とスケールもデカい。この際、知らない人は覚えてね。

2018年、駆け出しのTVディレクター桜子(阿部)は自分のルーツがロシアにあることを知り、あるロシア兵と日本人看護師の日記をひも解くことに。百年以上も前、日露戦争時代、ロシア人捕虜ソローキン(ロデオン・ガリュチェンコ)の手当てをする看護師ゆい(阿部二役)は、彼に対し愛憎半ばながら、惹かれてゆく…。

日露戦争時代、日本は世界から一流国と認めてもらうため、捕虜に虐待を加えない「ハーグ条約」順守の観点から、外出やアルコールも許可していたというから驚きで、これなら戦場にいるより幸せ、と捕虜たちが思うのも当然だし、捕虜とナースの恋愛も、あくまで極秘とはいえ、可能だったわけだ。だが、実は、このソローキンは、ある密命を帯びて捕虜になったことが分かるのが後半の展開のキモで、母国に戻ろうとする彼は、ゆいも一緒に連れて行こうとするが、ゆいはソローキンを逃がすため、一種の〝自己犠牲〟を決意するあたりが見どころ。

 

阿部純子のナース姿を堪能

ドラマチックな実録ラブ・ストーリーとして正統派だし、イッセー尾形が〝腹芸〟のできる収容所長を演じて、なかなかの貫禄を見せるものの、映画全体としては総花的な作りになったのがちょっと残念。後半〝ちょっといい話〟の連続も駆け足で語られ、感動する暇がない。特に、ソローキンとゆいが密会する情愛シーンが物足りない。見つめ合い、キスをし、さあこれから…というのに、描写は事前事後で平凡。そんな、殺生やで。せっかくソローキンが寝ている間にそっと出て行くあたりのヒロイン純子が凛々しくて美しいのに。

ラストの満開の桜も迫力不足で、劇中の〝ヘブンリー・ビューティー(この世のものとは思えぬ美しさ)〟の形容が泣くね。と、不満もあるが、クラシカルな〝ナース純子〟姿を楽しむコスプレ映画と思えば良い。彼女、『孤狼の血』でも薬局店員だったし、医療関係が似合うのかしらん。ボクの手当てもしてほしい。一躍、国際女優の切符を手に入れた感の純子、ハラショー! スパシーバ!(ロシアン・パブ通いで覚えた)とエールを贈りたい。

 

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