自粛なんてぶっ飛ばせ!ピエール瀧も斎藤工も怪演『麻雀放浪記2020』

麻雀放浪記

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『麻雀放浪記2020』

配給/東映 丸の内TOEIほかにて全国公開中
監督/白石和彌
出演/斎藤工、もも、ベッキー、ピエール瀧、竹中直人ほか

ピエール瀧の逮捕で公開が危ぶまれていたモンダイ作が、配給の東映の英断・蛮勇により、あえて世に問う、という形で晴れて日の目を見たことにホッとしている。諸般の事情でマスコミ試写をやらなかったので、封切り初日第1回をしっかり観てきた。公開されるまで何が起こるか? と安心できなかっただけになおさらだ。これで、今後、重要関係者の不祥事でその出演作までもが〝連帯責任〟を取らされる〝自主規制〟に一定の歯止めがかかったことは評価したい。

さて、『孤狼の血』(18年)など、現在の日本映画界で最も信頼印の1人、白石和彌監督作だけに、正味の内容はどうなんだ?

終戦直後の日本からタイムスリップして、その男・坊や哲(斎藤工)は、東京で行われるはずだった一大イベントが中止となった2020年に現れた。彼の目に映る、戦後とはまた別の意味で壊れたニッポンの只中で、若き天才ギャンブラーはどう闘うのか?

 

異端だが傑作

言わずと知れた阿佐田哲也原作のベストセラー小説『麻雀放浪記』は、84年に和田誠監督により正統派タッチで映画化されているが、こちらは“2020”と付くだけあって、大異端となっていた。時空を越えて、五輪中止の20年に、九連宝灯と落雷のためタイムスリップした坊や哲が麻雀タレントとなり、五輪の代替えの麻雀五輪に出場する、という設定がユニーク。この時代、警察国家、管理国家となっており、〝近未来もの〟としても面白い。あり得ない5枚目の五筒(ウーピン)の扱い方とか、ママ&ドサ健&出目徳というおなじみの人物を終戦直後のシーンとは別キャラの麻雀五輪の出場者として使う手法も納得がゆく。

最後は自動宅が電磁波テロで使えなくなり、手積みで打つあたり昭和感満点。感動した。主人公の麻雀タレントとしての呼び名が〝昭和哲〟。フンドシ姿で珍・熱演する斎藤工の潔さ! 私事で恐縮だが、ボクも〝昭和生まれの鉄〟だけに親近感を覚える。この際、〝昭和鉄〟って呼んで(苦笑)。

現代で坊や哲を救う麻雀メイド役のヒロイン・ドテ子を、もも(人気姉妹ユニット『チャラン・ポ・ランタン』のボーカル)が〝聖少女的公衆便所女〟という不思議な癒やしキャラを、なかなかのインパクトで演じている。土手でもどこでもヤラせるから〝ドテ子〟って名前もスゴいが、シマウマとしか感じない性癖で、相手にシマウマの面を被せて〝バーチャルSEX〟するのが面妖でワイセツ。

毎週〝打つ〟ボクなので〝麻雀もの〟にはうるさい方。これは一見ヘンな映画に見えて、実は筋の通った〝騒然たる〟傑作ではないか。おクラ入りしなくて良かった。あらためて、作品に罪はない!

 

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