岡田准一の新境地!“超凄腕の殺し屋”なのに変顔でヘタレる爆笑劇『ザ・ファブル』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ザ・ファブル』

配給/松竹 新宿ピカデリーほかにて全国公開
監督/江口カン
出演/岡田准一、木村文乃、山本美月、柳楽優弥、佐藤浩市ほか

岡田准一といえば、その硬派二枚目的ルックスのせいか、シリアスでストイックな役柄が多かったが、この新作は「こんな岡田准一、見たことない」と目を剥くほどの殺し屋コメディー異色作。主演級の男女スターが勢ぞろいして、にぎやかにおバカしてくれる。原作は南勝久の同名コミックス。主題歌はレディー・ガガという豪華版だ。

〝ファブル(寓話)〟と呼ばれる超凄腕の殺し屋(岡田准一)は、裏社会では伝説化していたが、仕事をやり過ぎたせいで、ボス(佐藤浩市)から「1年間、誰も殺すな。一般人に溶け込み普通に暮らせ。その間、誰かを殺したら、俺がお前を殺す」という強制的休業宣告を受ける。彼は佐藤という偽名を使い、相棒のヨウコ(木村文乃)とともに一般人として生活し、地味なバイトも始めるが…。

 

岡田のアクションに注目

早い話、ゴルゴ13が、市井の暮らしを始めたらどうなるか、みたいなもの。岡田クンは泣かず笑わず、しんねりむっつり、高倉健サンを目指しているのかと思わせる、そのマジメ顔を逆手に取ったようなギャグがいっぱい。その典型が、弱いふりするためにボコボコにされるシーンや、〝超・猫舌〟のくせに熱いものをついすすってしまうときのリアクション。まさに、こんな変顔の岡田、見たことない、である。本人もそんな〝新境地〟を楽しんだそうな。

もちろん、アクションは折り紙付きの彼だけに、アクション演出を担当した『96時間』シリーズなどで世界的知名度を誇るアラン・フィグラルズも彼の身体能力を絶賛したという。確かに相手を一瞬で仕留めるシーンの〝速さ〟は、神懸かり的。決してカメラのマジックで早送りしてるわけではないので、念のため。

その他、人気俳優がこれまでのキャラ一新。正統派美人女優の木村文乃はテキーラをガバガバ飲んでも平気の平左の最強酒豪ネーちゃん役だし、爽やか系二枚目の向井理は顔に丹下左膳のような傷を持つコワモテの裏社会組織の野心的幹部役だし、同じく爽やか系の福士蒼汰もファブルを執拗に狙う渋谷系ゆとり世代ヒットマンだし。柳楽優弥はムショを出たばかりの狂犬のような組員で…まあこれはイメージ通りかも(笑)。とにかく皆、目立つのは俺だ、私よ、と競う合っているのが面白い。これは俳優を楽しむ娯楽作。欲を言えば、セクシーさが少し足らないか。冒頭はゴルゴ13みたいに、美女を抱いている岡田准一なんて図が見たかったが、無理か。

江口カン監督は、堕落した元プロ野球選手が競輪の世界でやり直す苦闘を描いた『ガチ星』(18年)がボクは大好きだが、今回は一転、リラックスムード。このフットワークの軽さが頼もしい。

 

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