深夜の銭湯で死体処理…『カメ止め』を凌駕する非日常コメディー『メランコリック』

メランコリック

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『メランコリック』

配給/アップリンク UPLINK渋谷ほかにて公開
監督/田中征爾
出演/皆川暢二、磯崎義知、吉田芽吹、羽田真、矢田政伸ほか

例えば、銭湯は深夜に何をしているのか、と気になり始めると妄想が止まらない…そんな発想のブラック・ユーモア漂う異色作。〝深夜の銭湯は死体処理に最適〟という前代未聞の打ち出し。こういう異様な設定で映画を1本撮ろうとする若者たちがいるのだから、日本映画の未来は意外と明るい。近年は無名の連中が〝ジャパニーズ・ドリーム〟を遂げた『カメラを止めるな』(18年)が記憶に新しいが、個人的には〝カメ止め〟組より〝メランコリック〟チームを応援したくなるほど。興行的にも頑張ってほしい。

東大出のニート青年・和彦(皆川暢二)は、高校時代の同級生・百合(吉田芽吹)から銭湯のバイトを勧められる。面接をすると、主の東(羽田真)から、金髪頭の松本(磯崎義知)とともにあっさり採用され、銭湯で働き始めるが、ある夜、無人のはずの銭湯内に灯る明かりを不審に思い忍び込むと、惨劇を目撃するハメに…。

いわば、闇商売のヤバい現場と出くわし、さあ大変という典型的〝巻き込まれ型〟サスペンスなのだが、ブラック・ユーモアも効果的で、だからといってグロテスクな描写に恍惚とするようなバッド・テイスト映画とも一線を画する。惨劇の連続から幕切れへの切り返しが実に巧みで、爽やかな後味さえ残るヒューマン調、警察がまるで介入しないのも気が利いている。下手に介入するとモラルに縛られることになるからね。銭湯という穏やか平凡な日常空間の裏には、非日常のおぞましい光景が隠されているあたりがコワい。銭湯の主が主人公に諭すように言う「知る立場にない人間が、知ってはいけないことを知るのが一番危ないんだ」と。

 

ヤバい中高年VSマトモな若者の世代間バトル

東大出のニートの主人公と、意外や酒に弱く童貞の金髪君のバディー(相棒)映画としても楽しめる。2人とも実に雰囲気出ているし、他の、銭湯の主、ヤクザ、銭湯従業員の殺し屋ら、殺人を主導する中高年たちを演じる羽田真、矢田政伸、浜谷康幸らも存在感たっぷり。いずれも無名だが、逆に新鮮だったりする。アクションや惨劇描写もしっかりしているし、インディペンデント系映画の中でも異彩を放っている。最終的には、ヤバい中高年たちと、実は健全でマトモな若者たちとの世代間バトルのような印象も受けるが、これくらい挑戦的で丁度いい。

難を言えば、せっかく銭湯が題材なのだから、女優のハダカも見たかった、とオッサンはゲスな欲求をしたい。バイオレンスもユーモアも満足した。次はこの有能な若者たちのチームに〝エロス〟を題材にした作品を、というのはムチャぶりか。

 

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