ブレーク俳優・伊藤健太郎の“体操着くんくん”が衝撃的過ぎる話題作『惡の華』

惡の華

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『惡の華』

配給/ファントム・フィルム TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開
監督/井口昇
出演/伊藤健太郎、玉城ティナ、秋田汐梨、飯豊まりえほか

ウソくさい青春もののいわゆる〝キラキラ映画〟も職業柄見るが、さすがにウンザリ。シネコン行っても、見るものがなくて帰ってきた、という中高年世代の声も聞く。さすがに最近はキラキラも飽きられ始めている。その反動なのか、思春期の暗黒面をシビアに描く作品が増えた。良いことだ。眩いほどの青春を謳歌した人なんてほんのひと握り。だいたいは鬱屈した10代を過ごしていたはず。〝昔、10代だった人〟もヒリヒリと疼く古傷を思い返す気分で見てほしい。

山あいの地方都市に住む中学生・高男(伊藤健太郎)は、冴えないタイプで、唯一の心の寄りどころはボードレールの詩集『惡の華』である。ある日、憧れの存在で優等生の奈々子(秋田汐梨)の体操着をつい盗んでしまったことを、クラスの問題児・佐和(玉城ティナ)に知られることとなる。佐和は、体操着の件を秘密にする代わりに、自分に服従し、支配されることを高男に強要するが…。

 

“貴方”や“私”を描いた映画

確かに〝キラキラ映画〟にも、男女生徒が主従関係となる〝学園カースト制度〟的描写はあったが、どこか恋愛ゲームみたいで切迫度が薄かった。それに対してこちらは抜き差しならない心の叫びが描かれる。閉塞した主人公の秘めたるマゾ性、優等生美少女の内なる過激な暴力性、問題児美人生徒の意外に繊細な内面…。ボードレールの詩集を象徴的な小道具として巧みに使い、激痛を伴う〝青春惨話〟がつづられる。「変態!」だの「クソムシ!」だの悪態語が飛び交い、〝大事件〟にも発展してゆく。佐和の高男に対する容赦ない〝変態攻撃〟がスゴ過ぎる。

コミックス原作の押見修造氏と井口昇監督は、お互い「この原作を!」、「この監督さんで!」と、過剰に映るほどリスペクトし合っている。両人が対談でフェチにこだわった細部を喜々として語っているのを読み、得心した次第。ブルマー、胸の谷間などマニア心をくすぐる趣向が凝らされている。若い俳優たちも適材適所。特に、問題児生徒を演じる玉城ティナは11月公開の『地獄少女』でもヒロインの〝閻魔あい〟をムードたっぷりに好演しており、独特のニュアンスと妙な色気を醸す女優として先が楽しみだ。

思春期の暗黒という通過儀礼を経てこそ、人は大人になってゆく…。かなり悲痛な内容だが、同時に一種の解放感も味わえる。特に、地方都市で鬱屈した10代を過ごし、劇中にもある「山の向こう側」に憧れた人へ…。これは〝貴方〟や〝私〟を描いた映画なのだ。

 

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