【緊急潜入ルポ】不夜城・新宿歌舞伎町「ぼったくりバー」は…

歌舞伎町遠景

(C)まいじつ

「そう遠くない日に、ここ歌舞伎町で突発的な衝突が頻繁に発生するようになるかもしれない。この街の飲食店、風俗店が入っている雑居ビルは、例えば2階が山口組、3階が住吉会、4階が稲川会のように“カオス状態”が長らく続いている。“表”に出ればいやでも目立つ街だから、どこも静かにしていたんだが、今回の分裂騒動で動かざるを得なくなる時が必ず来る。まあ、日本一の“シノギの街”だから当然だな」(歌舞伎町事情通)

この春まで“ぼったくりの聖地”などと汚名を着せられていた東京・新宿歌舞伎町は、聞くところによれば、随分と浄化が進んでいるらしい。ついこの間まで「ビール2杯で20万円も請求された」と客が交番に駆け込んでも「民事不介入」だとして取り合ってくれなかったが、今は取り急ぎ『ぼったくり防止条例』が適用され、警察は被害者である客を一時的に保護するという。店員が「無銭飲食です。警官は引っ込んでいてください」と叫んでも、店員と客を一度分けて“刑事事件”として扱うのだ。

果たして、本当に“静寂”は訪れているのか―。

「ヤクザの本懐がシノギの制圧である以上、カネと欲が渦巻く場所で抗争が起こるのは必定。“不夜城”歌舞伎町の『今』を潜入リポートせよ!」とデスクに命じられ、記者Kは肌寒い日が続いた9月上旬のとある日、1人午前0時過ぎに“ぼったくりオトリ捜査”を開始した。

 

「3000円以上取られたらボクが責任を持ちます」

早くも風評被害を受けているのだろうか、明らかに人通りが少ない気がする…。黒人の呼び込みずいぶん少なくなったように見える。それでも、相変わらず日本人のキャッチが客に「1時間ポッキリ3000円」などと声を掛けている光景は変わらない。

キョロキョロしていると、40歳くらいの男に笑顔を向けられた。3000円で飲み放題、有名キャバクラ店の案内人だという。

「ウチはネットでも話題の『●●』です。聞いたことありませんか。優良店ですし、かわいい娘ぞろいで今ならすぐにご案内できますよ」と、iPadを見せながら言った。

画面には上質な肌ツヤの美人ギャルが並んでいる。

「3000円以上請求されても、おカネありませんよ」

記者Kは念を押し、キャッチの名前まで訊いた。

「信用してください。ボクの名前はT山Y幸です。もし3000円以上取られたらボクが責任を持ちます」

誠実そうに名乗るこの男の言葉を信じ、コマ劇場跡地に完成した新名所『TOHOシネマズ』近くの雑居ビルに案内してもらった。

 

「ごゆっくりどうぞ」と、白い歯を見せて一礼するT山に見送られ入店。店内はカウンターにテーブルが5つばかりの思った以上に小さいスペース…。

《客がいない!》

一瞬で不安に陥ったのもつかの間、すぐに女のコが2人付いた。一応、iPadで見た通りの“上玉”だ。

「こんばんはー。どちらから来たんですか~」

抱きつくように体を寄せるなりそう言うと、返事も待たずにすかさず「何か飲んでいいですか~?」と聞いてきた。

「これ、うちの店のメニューです」と、ギャル風のホステスがサッとテーブルに広げる。だが、赤っぽい照明の下、文字が細かい上に赤字で書かれているのでよく読めない。そもそも3000円ポッキリと言っていたので、メニューを詳しく見る必要もないはずだ。

「そこのキャッチの人に1時間3000円でOKと聞いてきたんだけど…」とホステスに言うと、近くに立っていた“オラオラ系”のボーイが一瞥をくれた。

「まあまあ、乾杯しましょ。ワイン飲んでもいい?」

女優の桐谷美玲に似ているリーダー格らしき女性が会話に割って入り、いつの間にかボーイにワインボトルを頼んでいる。

 

《どうせ、飲み放題だからいいだろう…》

入店してまだ5分足らずだというのに、記者Kは早くも“イイほうの考え”しか浮かばなくなっていた。美人に弱いにも程がある。やがて、ピーナツとマグロキューブが運ばれてきた。

《このつまみ程度なら、大したことはないな》

そう思いながらも無意識にワインを嫌い、焼酎の水割を頼んだ。

「歌でもどうですか?」

他愛のない会話がしばらく続いた後、カラオケのリモコンを手渡すギャル風のホステス。気分もよくなり、得意の’90年代の懐メロを披露すると、大げさに拍手で盛り上げてくれた。

「懐かしいわ。久々に聴きました。もっと歌って」

そう言いながら桐谷似の女がワインボトルを追加しようとした。店に来てからちょうど1時間が経とうとしているところだった。

記者Kは「すみません。もう帰るので会計をお願いします」と告げた。すると店の奥から店長らしき黒服がヌッと現れた。桐谷似のホステスに目配せをしたような気がする。

3分ほどして請求伝票を見せられた。

《16万4657円!》

 

明細はこうだ。

◇セット料金 2万円
◇タイムチャージ 2万円(30分1万円×2)
◇テーブルチャージ 1万円
◇スペシャルチャージ(指名) 3万円
◇おつまみ 1万円(5000円×2)
【小計 9万円】
○サービス料40% 3万6000円/累計12万6000円
○ボックスチャージ10% 1万2600円/累計13万8600円
○ミュージックチャージ 10% 1万3860円/累計15万2460円
○消費税 1万2197円
【合計 16万4657円】

記者Kは用意していたセリフを何とか絞り出した。内心、言うハメになるとは思っていなかったが…。

「納得できません。警察に行きましょう」

「払わないと無銭飲食ですよ。前科が付いてしまっては、仕事や家庭に差し障るのではないですか」

数十センチ目の前に、黒服の脂ぎった顔が近づいてきた。

ここで記者Kは頑張った。

《打ち合わせ通りなら…後少し…》

「そんなに払えません。T山さんというマネジャーを呼んでください。呼ばないなら交番へ行きましょう」

記者Kは興奮気味に防戦する。

 

「ウチのマネジャーは、あそこに立っている者ですよ。ハハァ、アナタ…騙されましたね。さあ、では明細を一つ一つ確認しましょうか。まずは…」

これだけ社会問題になりながら、まだぼったくりがはびこっていたとは…。少し前までとは違い、店としては警察に行かれては終わりだから、あくまでも“店内”で話をつけようとする。

打ち合わせの通りなら、歌舞伎町でも有名な裏社会の知人が間もなく登場してくれるはずだ。そう思った瞬間、記者Kの携帯電話にメールの通知音が鳴った。

『悪いな。女に呼ばれてそっちに行けない』

“不夜城”新宿歌舞伎町。日本一の歓楽街に、静寂を確認することはできなかった。季節を無視するような肌寒い夜だというのに、記者Kの体中から、汗が滝のように流れてきた。

 

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