松岡茉優の“淫らなホステス”役に注目! 白石和彌監督最新作『ひとよ』

ひとよ

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ひとよ』

配給/日活 新宿ピカデリーほかにて公開
監督/白石和彌
出演/佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、筒井真理子、田中裕子ほか

『麻雀放浪記2020』『凪待ち』に続いて今年3本目の新作公開となり、相変わらず〝売れっ子〟の白石和彌監督。彼のこだわりの1つに、『凪待ち』もそうだったが〝疑似家族〟というテーマがあった。それが今回、本格的には「初の」とも言える〝血縁〟を描いているところが見逃せない。そして配役も豪華で、主役級がズラリ。「白石作品にぜひ!」という初参加組も多いようだ。原作は劇作家・桑原裕子の同名舞台。映画は茨城県・神栖市のロケが効いている。

15年前、夫の暴力に耐えかね、子供たちのことを思い、夫を殺害し、刑期を終えた後に音信不通となった母・こはる(田中裕子)。そして現在、長男・大樹(鈴木亮平)、次男・雄二(佐藤健)、長女・園子(松岡茉優)は、思い描いた未来と違った現実の中、心の傷を隠したまま成人していた。そこに、母が帰って来る…。

 

圧倒的力感で描かれる家族の闘争

キャストで注目は、松岡茉優か。今回はややケバ化粧で場末のはすっぱホステスを演じ〝好感度女優〟の殻を軽く破っているのが何より。泥酔して醜態をさらすし、佐藤健にスリッパ投げつけて、タメグチでブーたれる姿が頼もしい。そういえば『万引き家族』(18年)では〝JK風俗嬢〟役だったなあ。いっそ〝盛り場女優〟と呼びたい。もちろん、褒め言葉である。〝万引〟と言えば、佐藤健演じる次男はガキのころエロ雑誌(実在の『デラべっぴん』というのが説得力あるね)を万引した黒過去があるという設定。小説家志望だが、今は東京で三流雑誌の記者を心ならずも続け、風俗嬢の取材をしたりしている。鈴木亮平演じる長男は地元の電器店で〝マスオさん〟状態。各々鬱屈を抱えバラバラの中で、〝母帰る〟はどんな化学反応を引き起こすのか、目が離せなかった。

佐藤健が久々に戻った地元で韓英恵とイタす〝幼なじみSEX〟、はたまた母親介護に疲れたタクシー会社事務員を演じる役の筒井真理子が見せる〝カーSEX〟などのエロスも醸し出され、固唾を呑む中、家族全員が集まる港の駐車場でクライマックスを迎える。

相変わらずの圧倒的な力感で〝家族の闘争〟を描いているのだが、少々ヒネくれて言えば、〇〇して、〇〇して、〇〇して、〇〇すれば〇〇するのかよ、とも思う(ネタばれ注です)。これまで映画で〝一件落着〟を見せなかった白石演出だが、今回はこうせざるを得なかったのか…。佐藤が風俗・事件誌の仕事を必要以上に毛嫌いする描写も、週刊誌ファンとしては違和感を持った。何だかんだで、個人的には香取慎吾が凄絶だった〝疑似家族〟映画『凪待ち』に愛着を感じるのである。

 

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