ジャンプ史上もっとも革命的な女性キャラ?『封神演義』人気を支えた妲己の魅力

ジャンプ史上もっとも革命的な女性キャラ?『封神演義』人気を支えた妲己の魅力

ジャンプ史上もっとも革命的な女性キャラ?『封神演義』人気を支えた妲己の魅力 (C)PIXTA

『週刊少年ジャンプ』の名作漫画には、必ずといっていいほど魅力的な女性キャラクターがつきもの。その中でも異色の輝きを放っていたのが、藤崎竜の『封神演義』に登場した妲己(だっき)だ。なぜ彼女の存在は画期的だったのだろうか。

読者にトラウマを植え付けた悪女

「封神演義」は、古代中国の「殷」を舞台にした歴史SF。妲己が皇后となり、狂い始めた国で、仙界からやってきた軍師・太公望が革命をもたらすべく奔走する…というストーリーだ。

そこで妲己はいわばラスボス、もしくは黒幕のような立ち位置。相手を魅了し、意のままに操る「誘惑の術」の使い手で、衣装もボディラインが露わなレオタードのようなものを着用していた。

普段は茶目っ気たっぷりに振る舞っているのだが、目的のためには手段を選ばない邪悪な顔を覗かせることも。その異常さを象徴するエピソードとして、伯邑考を亡き者にしたことは広く知られている。

伯邑考を手籠めにしたかった妲己だが、彼は「誘惑の術」を跳ねのける精神力の持ち主だった。そこで妲己は強大な権力によって伯邑考を“ひき肉”にし、ハンバーグに調理。それを伯邑考の父・姫昌に食べさせるという残虐きわまりない仕打ちを施した。

しかもその話が描かれた第25話はまるでギャグ回のようなテンションで、サブタイトルは『妲己・喜媚の3分間クッキング』。多くの読者にトラウマを植え付けた。

現代でも語り継がれる妲己のキャラ像

そんなエピソードだけ抜き取ると、いわゆる「サイコパス」なキャラとして認識されそうなものだが、妲己のキャラクター像はその言葉だけでは表せられないだろう。肉弾戦でも他を圧倒する強さで、策士としても有能。作中トップクラスの軍師だった太公望を、知略で上回ったこともある。

さらに物語が終盤に差し掛かると「愛」のテーマの下に、敵・味方の枠組みを越えた存在となり、太公望と読者をひたすら翻弄。ヒロインでも敵でもない独自の立ち位置を確立した。

序盤の振る舞いは、男を破滅に向かわせる運命の女性「ファムファタル」の類型に近いが、終盤では男たちの欲望からも遠ざかっていく。何か大義や邪悪な目的があるわけでもなく、ひたすらに読者の理解を超える存在であり続けた。少年漫画における“敵”として、その描き方はきわめて画期的なものだと言える。

ちなみに、ジャンプ漫画を題材とした二次創作漫画で知られる同人作家・クリムゾンも妲己に魅せられた1人。以前YouTubeに投稿した『ジャンプの歴史を変えた女性キャラランキング』という動画では、妲己を5位に選出しており、《新感覚の女性ボス像を築き上げた》と評価していた。

連載終了から20年以上が経った今でも、語り草となる妲己の魅力。もしTVアニメ化が一度でも成功していれば、その魔力に人生を狂わされる人がもっと増えていたかもしれない。

文=野木

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Halfpoint / PIXTA

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