
イラストレーター絶滅フラグ? イーロン・マスクも注目するAI『DALL・E2』 (C)PIXTA
AIの技術発展は目覚ましい成果を上げており、一説には20年後におよそ50%の職業がAIに代替されるとも言われている。その中で芸術分野だけは例外とされてきたが、最新のテクノロジーによって“人間界の最後の砦”が危機に瀕しているという。
誰でもイラストレーターになれる時代
話題を呼んでいるのが、『DALL・E2』というAI。イーロン・マスクをはじめとした有力投資家も参加する非営利団体「Open-AI」が産んだ最新技術だ。このシステムを使うと、文章を入力しただけで、そのシチュエーションに合った画像を自動で生成できる。
さらに生成された結果に不満があれば細かなオーダーを追加することで、画像の精度を高めることも可能。すなわちイラストレーターが普段やっている作業を、代わりに行ってくれるのだ。
そのクオリティーは決して“真似事”レベルではない。ある技術者が「DALL・E2」に生成させ、ツイッター上にアップした猫の油絵は、人間の作品と勘違いする人が続出するほどの完成度。10万いいねを記録するほどのインパクトを与えた。
なお、「DALL・E2」のイラストをアップする“絵の描けないイラストレーター”は、SNS上で日に日に増加中。「Weird Dall-E Mini Generations」というbotはアカウント開設から半年足らずでフォロワー数100万人を超え、世界的な注目を集めている。
絶望するアーティストの姿も…
画像生成を行うAIは古くから存在したが、人間のイラストっぽい雰囲気があった程度。それに対して「DALL・E2」が生み出す画像はクオリティーが段違いに高く、不自然さがまるでない。
また、生成するイラストの画風まで指定できるという仕様も驚き。ジブリ風、印象派風、写実主義、80年代…指定した言葉1つで、いくらでも「〇〇っぽい」イラストを出力してくれる。そのためにかかる時間は、わずか数分だ。
人間であれば数時間かかるが、新技術はあっという間に量産できる。耳が早い国内外のイラストレーターは、少なからず危機を感じているようだ。とある海外のイラストレーターは、「DALL・E2」が自分たちの職業を奪う危険な技術だと訴える声明文を発表している。
今はまだ一部の技術者のみが試している段階だが、一般層に広まっていくのも時間の問題。この先さらに技術が進化していけば、クリエイターはAIの描いた絵を修正する下請け作業者になってしまう日が来るのかもしれない…。
文=富岳良
【画像】
master1305 / PIXTA