『水星の魔女』以上のポリコレガンダム!? ジェンダーや移民に斬り込んだ『∀ガンダム』

『水星の魔女』以上のポリコレガンダム!? ジェンダーや移民に斬り込んだ『∀ガンダム』

『水星の魔女』以上のポリコレガンダム!? ジェンダーや移民に斬り込んだ『∀ガンダム』 (C)PIXTA

今年10月から放送が始まったアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(TBS系)。女性主人公の起用や同性婚めいた展開から“ポリコレガンダム”との呼び名が広まっているが、実は「ガンダム」シリーズにはもっとポリコレ要素の強い作品があったという。

移民・有色人種・炭鉱夫の主人公

時代に先駆けて放送されたポリコレガンダムとは、『∀(ターンエー)ガンダム』のこと。シリーズの生みの親・富野由悠季が総監督を務めた作品で、1999年~2000年にかけて放送された。

同作の舞台は、戦争により産業革命以前にまで文明が衰退してしまった未来。一部の人間は、戦火を逃れて月に移住し、「ムーンレィス」となっていた。そんな月の住民たちが地球に帰還しようとしたことで、地球人との戦争が巻き起こる…というストーリーだ。

主人公のロラン・セアックは、「ムーンレィス」の1人。戦争以前から地球に住んでいたのだが、戦争勃発後、地球人から“侵略者”として差別を受けてしまう。どこか、昨今の移民問題を思わせる立場だ。

そしてロランの職業は、炭鉱夫。その後、働きぶりが認められて名家であるハイム家の執事となり、もっぱら子女であるソシエ・ハイムとキエル・ハイムの世話役、いわゆる「下男」の役割を担うことに。

さらにロランは、白色人種ばかりの作中で褐色の肌をしている設定。有色人種にして移民であり、炭鉱夫で下男。昨今、差別問題の被害にあっている人々の要素を、これでもかと組み合わせた主人公と言えるだろう。

LGBTQについても示唆的な描写が

ちなみに「∀ガンダム」では性差の問題、いわゆるLGBTQや、女性の権利についても先進的な描写が。ロランは中性的な顔立ちであることから、地球の支配者層であるグエン卿に女装させられ、いわゆる“男娼”になりかけるシーンがあるのだ。

ロランはこうした扱いにも敢然と立ち向かい、地球人とムーンレィスの共存を求めて戦う。主人公像を見るだけでも、「水星の魔女」よりよほど“ポリコレ的”と言える設定ではないだろうか。

さらに「∀ガンダム」の作品自体、深い示唆に富んでいる。最終話ではとある女性キャラクターが、「アメリアはわたくしがスカートのまま治めますわ」と政治に参加することを宣言。男娼を飼おうとしたグエン卿が否定され、正しく男女平等な世界がやってくることを暗示して、物語は幕を閉じる。

「∀ガンダム」を見ないことには、「ガンダム」シリーズにおける「ポリコレとは何か」を語ることはできないだろう。

文=Tら

【画像】

voyagerix / PIXTA

【あわせて読みたい】