
アイヌ問題が再燃…実写版『ゴールデンカムイ』のキャスティングはどうなる? (C)PIXTA
今年4月に実写映画化が発表された大人気漫画『ゴールデンカムイ』。主人公・杉元佐一のキャスティングに関する情報も報じられたが、この件に伴い、ヒロイン・アシリパの配役をめぐる“簡単ではない問題”が浮上している。
アシリパの配役でひと悶着が…
『東スポWEB』は10月19日、杉元役に俳優の山﨑賢人が内定したという情報を報道。作品の公式からは詳しいキャストや公開時期といった情報は明かされていないが、早い段階での情報リークとなった。
そんな報道を受けて反応を示したのが、海外を拠点に活動する俳優・松崎悠希。彼は自身のツイッターにて、アイヌ民族の少女・アシリパ役として、アイヌの俳優をキャスティングするよう呼び掛け、《金カム実写版制作者にいつもの「いい加減なキャスティング」をしたらどうなるか、見せてやりましょう》などと熱弁していた。
もともと実写化が発表された4月から、彼はアシリパの件について声を上げている。その理由はアイヌ役にアイヌではない俳優を起用することで、「誤った表象」をばら撒く可能性があるというもの。実写化が偏見を生み出すことを危惧し、熱心な呼びかけを行っている。
実写版「ゴールデンカムイ」でアシリパ役に…
アイヌの俳優をキャストすべきだと思う人
👉この投稿に、いいね!アイヌの俳優をキャストしなかったら観に行かない人
👉この投稿を、リツイート!金カム実写版制作者にいつもの「いい加減なキャスティング」をしたらどうなるか、見せてやりましょう。 https://t.co/pYHuhvPTxg
— Yuki Matsuzaki 松崎悠希 (@Yuki_Mats) October 20, 2022
「ゴールデンカムイ」が抱える複雑さ
松崎の意見に対して、ネット上では《本物のアイヌを配役するかどうかなんてどーでもいい》《人種を優先して配役を決めることほど「いい加減なキャスティング」はない》《アイヌかどうかよりキャラに合っている方が大事》《役者自ら表現の幅を狭めてどうする?》といった反論が続出することに。
ポリティカルコレクトネス(ポリコレ)的観点による提言だったため、余計に反感を買ってしまったのかもしれない。
とはいえ、「ゴールデンカムイ」においてアイヌ民族は最も重要なテーマであり、1つ間違うと批判が起こる可能性がある。出自が同じ役者を抜擢するかはともかくとして、アシリパのキャスティングは慎重に行うべきだろう。
アイヌの問題だけでなく、同作は今年4月に開催された展覧会でちょっとした炎上騒動が起きたことも。作者・野田サトル氏が所有している「軍服」の展示をめぐり、《当時の軍服を手放しで「カッコいい!」って言う前に、ちょっとなんか考えなかったのか…?》《アイヌの文化で金稼いでるコンテンツの展示展で、侵略した側の軍服展示してかっこいいですねは余りにもさぁ…》などと批判されていた。
野田サトル先生所蔵の鶴見中尉の軍服!「とても状態がよい。当時の肋骨服です」と先生のコメントあり。本当にカッコいい!テンション上がりますね〜。鶴見ファンの皆さま、ぜひ間近でご覧ください。→(続 pic.twitter.com/IQJqlMWjsl
— 美術展ナビ (@art_ex_japan) April 27, 2022
日本映画界では、“売れっ子”を適当に抜擢するキャスティングが蔓延っている。もし「ゴールデンカムイ」が同じような鈍感さで制作されれば、酷評は避けられなさそうだ…。
文=大獄貴司
【画像】
LustreArt / PIXTA