
次世代の『呪術廻戦』は生まれない? ジャンプ作家が“藤本タツキの劣化コピー”に苦言 (C)PIXTA
『週刊少年ジャンプ』の『JUMP新世界漫画賞』といえば、新人漫画家の登竜門の1つとして有名。そこで『チェンソーマン』の藤本タツキを表面上模倣するような応募作があふれかえり、審査員が苦言を呈する事態になっていた。
タツキフォロワーだらけの新人賞
驚くべき現状が明らかになったのは、11月21日発売の「ジャンプ」51号。そこで「JUMP新世界漫画賞」2022年9月期の総評が掲載されていたのだが、審査員を務めた漫画家・松井優征が辛辣なコメントを放っていた。
いわく、「藤本タツキ先生の影響を受けたような一話完結のヒューマンドラマ」作品が非常に多く、見飽きてしまったという。
本日発売の少年ジャンプ51号にて9月期新世界漫画賞結果発表中!なんと、準入選1本、佳作5本の超超大豊作回となりました!バラエティに富んだ受賞作はジャンププラスにて全作品公開中です!https://t.co/Sg1nITXYRD pic.twitter.com/oS3f4fLUjX
— 少年ジャンプ漫画賞 (@jump_mangasho) November 21, 2022
松井といえば、『魔人探偵脳噛ネウロ』や『暗殺教室』など、キャッチーかつオリジナリティーあふれる作品を連発する作家。漫画論として「他人と違うことをやるのが大事」と常々言っていることもあり、特定の作家を模倣するような創作活動に思うところがあったのかもしれない。
実際に「ジャンプ」読者たちも、最近の新人漫画家に“タツキフォロワー”が多いことは痛感しているようだ。ネット上では、《とうとう審査員の連載作家から名前出してタツキコピー多すぎ問題に触れられるの、異常だぜ》《最近新人さんの漫画がジャンプに限らずタツキコピーだらけでげんなりするんよな…》《漫画界の新海誠》といった共感の声が続出していた。
ただのパクリで終わるか、それとも…
タツキフォロワーの具体例としては、「JUMP新世界漫画賞」2021年12月期で準入選となった阿久津ナオキの『ボーイミーツガールミーツボーイ』などが有名だ。
同作は絵柄やコマ割りのクセまで藤本タツキ作品と酷似しており、ネット上では“本人疑惑”さえ巻き起こったほど。編集部からの講評でも「もう少し自分なりの絵柄になるよう修正してみてほしい」と、そのマネっぷりを指摘されていた。
とはいえ、藤本は独自の世界観を築き上げた作家だが、その作風は膨大な映画や漫画などのインプットによって支えられている。ほとんどのフォロワーは、絵柄やコマ割り、セリフ回しなどの表層的な模倣にとどまっていると言えるだろう。
現在「ジャンプ」で看板を張っている芥見下々の『呪術廻戦』は、『HUNTER×HUNTER』や『BLEACH』などから濃厚な影響を受けているものの、その作風は決して模倣止まりではなく、独自の作家性を構築することに成功している。
“劣化コピー”を超えて次の「呪術廻戦」を生み出すような新人作家は、はたして現れるのだろうか。
文=Tら
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Khosro / PIXTA