
現在の『ジャンプ』からは名作が生まれない? なろう系じゃない新連載は次々と打ち切りに… (C)PIXTA
4月10日発売の『週刊少年ジャンプ』19号で、渡辺シンペイのファンタジー漫画『ギンカとリューナ』が連載終了を迎えた。わずか半年での打ち切りとなったが、それに対して不満を抱く読者も多いようで、SNS上が大荒れしている。
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「なろう系」は生き残っているのに…
どれだけ掲載期間が短い作品でも、新連載には多かれ少なかれファンがつくもの。不完全燃焼で打ち切りを迎えた際には、ファンたちが「ジャンプ」編集部の判断に怒りをぶつけるのが恒例行事となっている。
「ギンカとリューナ」の場合にも同じような騒ぎが起きたのだが、どうやら少し事情が違っていたようだ。なぜか多くの読者たちが『マッシュル-MASHLE-』の名前を挙げつつ、不満を唱えていた。
具体的には、《マッシュル好きな人には本当にごめんなさいなんだけど、あれで連載続けられてギンカとリューナ打ち切りってどうかしてる》《なんでマッシュルが伸びてギンリューがダメなんですか?》《マッシュルがアニメ化してギンカとリューナはアニメ化しないのか…》《マッシュルがあの内容で連載を続けられて、ギンカとリューナや大東京鬼嫁伝みたいなキャラや設定が掘り下げられてようやく盛り上がるタイプの漫画が打ち切りになるの明確なバグ》と嘆く声がいくつも上がっている。
「マッシュル」は「ジャンプ」2020年9号から連載されている中堅漫画で、今年4月からTVアニメがスタートしたほど絶好調だ。
その作風はなろう系に近いとも言われており、魔法使いの国で唯一魔法が使えない主人公が、筋肉だけで無理難題を乗り越えていくというもの。よく言えば王道、悪く言えばワンパターンな展開となっている。
作者の甲本一はその手法を隠しておらず、「JUMP新世界漫画賞」の審査員を務めた際には、「嫌な奴で強い奴を、みんなが殴ってほしいときに殴っちゃいけない状況で殴る」という定型をデビュー前から一貫して使ってきたことを明かしていた。
ファストフード化するジャンプ漫画
緻密に世界観を組み立てていった「ギンカとリューナ」が打ち切られ、ワンパターンでなろう系ライクな「マッシュル」が大ヒット…。そんな現状を、一部のファンたちは受け入れられなかったのだろう。
だが、近年の「ジャンプ」では、他にも丁寧な展開をウリにした新連載が次々と打ち切られている。
たとえば、『地獄楽』の作者・賀来ゆうじが手掛けた『アヤシモン』は、25話で打ち切りに。妖怪が巣食う裏社会をテーマとして、重厚な世界観を描き出していたが、物語が盛り上がるまで読者アンケートが低迷してしまったようだ。
ほかにも、宇宙人と戦うハードボイルドな刑事を描いた『ALIENS AREA』や、不思議なスマホに選ばれた者たちの頭脳戦を描いた『すごいスマホ』も、20話ほどで終了。いずれも、もう少し猶予があればヒット作になったかもしれないと、惜しまれながら終了した作品だ。
「ジャンプ」は読者アンケートによって連載存続が左右されるため、1話ごとにインパクトの強い展開が求められる。とくに最近ではSNSの盛り上がりと同期しているため、丁寧にストーリーを組み立てる作品は生き残りにくいのかもしれない。
その点でいえば、お手軽にスカッとする展開を描けるなろう系は、今の「ジャンプ」と抜群に相性がいい。今後も実質なろう系の作品が増えていくのだろうか…。
文=野木
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