
少年誌の“ジャンプ化”が止まらない! 部数激減『サンデー』と『マガジン』が苦肉の策に… (C)PIXTA
日本のコンテンツ業界で『週刊少年ジャンプ』が大ブームを巻き起こしている。しかし、同じく“三大少年誌”と呼ばれていた『週刊少年マガジン』や『週刊少年サンデー』は、なぜか一向に日の目を浴びていない。
発行部数が低下を続けるなか、ついには“禁じ手”に染まりそうな気配も漂っている。
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5年で4割以上の売り上げ減…
日本雑誌協会が公表しているデータを見ると、紙の漫画雑誌が出版不況の煽りを受けていることがハッキリとわかる。
2023年1月~2023年3月の平均印刷部数では、「マガジン」が40万4,167部、「サンデー」は16万4,231部という数字だった。5年前のデータと比べると、「マガジン」は81万5,458部、「サンデー」は29万8,333部だったので、それぞれ4割以上も減少していることになる。
もちろん最近の漫画読者は電子書籍への移行が進んでいるため、紙の雑誌が売れなくなっただけなのかもしれない。しかし「ジャンプ」は直近の発行部数が125万7,273部で、5年前から3割弱の低下率にとどまっている。
しかも「ジャンプ」はデジタル版の発行部数が、昨年10月の時点で毎号70万部を突破していた。紙媒体と電子版を合わせると、むしろ5年前より発行部数が増えているのだ。
「『ジャンプ』が依然として王者の風格を漂わせている理由としては、やはりメディアミックスの大成功を挙げるべきでしょう。近年ヒットするアニメは、その多くが『ジャンプ』系列の原作。アニメファンたちも『またジャンプか』といった反応で、1つのブランドとして確立されている節があります」(アニメライター)
“ジャンプっぽい漫画”が増える可能性
一方で「サンデー」は『名探偵コナン』、「マガジン」も『東京卍リベンジャーズ』と、メディアミックスの成功作を輩出している。だが、作品単体が盛り上がるばかりで、雑誌自体のブランド力を確立できてはいない。
「アニメ関係者は、次にヒットさせる漫画原作を血眼で探しているのが現状。その基準としては、当然『ジャンプ』ブランドが第一優先のようです。とはいえ、どこの会社も同じことを考えているので、権利の奪い合いは簡単にはいきません」(同)
そうした動きを見越した結果なのか、「サンデー」や「マガジン」では「ジャンプ」に近い作風の新連載も次々登場している。
今年に入り、「マガジン」では渡辺静の新連載『デッドアカウント』がスタート。霊媒を題材とした学園バトルファンタジーで、『呪術廻戦』と酷似した“マガジン版呪術”として知られている。
また、4月から「サンデー」で始まった新連載『タタリ』もオカルト要素のある現代ファンタジーで、「呪術廻戦」に近い印象だ。
「『呪術廻戦』は、業界で次なるドル箱として期待されている作品。“呪術っぽい”という触れ込みがあれば、アニメ関係者にメディアミックスの企画を通しやすいのは確かでしょう。さらに『サンデー』では露骨に『ジャンプ』作家を招くような動きも見られます。
『サンデー』本誌では『Dr.STONE』のBoichiが作画を担当する新連載『スーパーストリング ―異世界見聞録―』が始まったほか、『月刊サンデーGX』や『サンデーうぇぶり』では『べるぜバブ』で知られる田村隆平の新連載『COSMOS』が始まりました」(同)
このままいくと、あらゆる漫画雑誌が“ジャンプ化”していく未来もありそうだ。
文=「まいじつエンタ」編集部
【画像】
Sergiy Tryapitsyn / PIXTA