
『ONE PIECE』105巻(尾田栄一郎/集英社)
日本のアニメ業界は国内のクリエイターが中心となり、ガラパゴス的な進化を遂げてきたが、いよいよ変化の時がやってきたかもしれない。東映アニメーションの長寿アニメ『ONE PIECE』にて、アメリカ人アニメーターが快挙を成し遂げたのだ。
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第1066話の演出担当が話題に
話題を呼んでいるのは、6月25日される第1066話「大トリ来る!波動と磁気の大技」のスタッフだ。同エピソードにて、アメリカ人アニメーター、Henry Thurlow(ヘンリー・サロウ)氏が演出を担当するという。
ヘンリー氏は6月12日、自身のツイッターにて、ビッグ・マムのイラストつきで《My TV anime Episode Director debut!》と喜びを語っていた。
"Big Mom" was first introduced over 10 years ago in One Piece episode 571.
No one has ever been able to beat her, not even the main characters.
In the next episode… Law and Kid have something to say about that.
One Piece episode 1066
My TV anime Episode Director debut! pic.twitter.com/Mjl0WwSbDc— Henry Thurlow (@henry_thurlow) June 12, 2023
「演出とは各話ごとの“監督”にあたるポジションで、品質管理を一手に引き受ける存在です。非常に重要な役割なので、アニメーターとしてキャリアを積み、実力を信頼されている人物にしか任せられません。
昨今のアニメ業界では、海外のクリエイターが参加することも珍しくありませんが、それはあくまで原画や背景などの話です。ヘンリー氏の起用は、きわめて異例と言えるでしょう。
実際にアニメ『ONE PIECE』で外国人が演出を担当するのは、今回が初の試みのようです」(アニメ誌ライター)
ヘンリー氏は2021年より東映アニメーションに入社し、アニメ「ONE PIECE」の制作に参加。当初は作画スタッフだったが、第1017話で絵コンテデビューを果たし、着実に経験を積んできた。
そしてついに演出にまで上り詰めたヘンリー氏に対して、海外のアニメファンからは《レジェンド》との呼び声も上がり始めている。
日本アニメの虜になる海外クリエイターたち
外国人が演出を担当することが珍しいのは、アニメ「ONE PIECE」にかぎった話ではない。ヘンリー氏のツイートによると、東映アニメーションのTVアニメシリーズで、外国人が演出を担当したことはこれまでになかったという。
東映アニメーションは70年以上続く歴史あるアニメ会社で、無数の作品を世に送り出してきた。そんな場所から新たな動きが起こったことで、業界にも大きな影響を与えそうだ。
「ここ数年、アニメ業界でも外国人クリエイターの存在感がますます強まっています。そもそもヘンリー氏は2016年に設立された、日本初の黒人が経営するアニメスタジオ『D’ART Shtajio』出身でした。
同スタジオはこれまでに、アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』や『進撃の巨人』などの人気アニメの制作に携わっています。
ちなみに同スタジオの創設者であるアーセル・アイソム氏は、『攻殻機動隊』の影響でアニメーターを志すようになった人物。ここ数年、海外では『鬼滅の刃』を筆頭とした日本アニメブームが巻き起こっており、若者たちを魅了しているので、将来的には外国人アニメーターがさらに増えるのではないでしょうか」(同)
アニメ業界の新時代は、もうすぐそこまで近づいているのかもしれない。
文=「まいじつエンタ」編集部
写真=まいじつエンタ
■『ONE PIECE』105巻(尾田栄一郎/集英社)