
正義マンが急増したのは『鬼滅の刃』の影響? 悪の存在を許さない炭治郎の独善性 (C)PIXTA
昨今のSNSでは、ことあるごとに「正義マン」と呼ばれる存在の暴走が目立つようになった。その背景として、人気漫画『鬼滅の刃』の影響を指摘する声も上がっている。
というのも同作の主人公・竈門炭治郎は、まさに正義によって悪を滅ぼすキャラクターだからだ。
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ロジハラで追い詰める炭治郎
炭治郎といえば、自分のことでも他人のことでも熱く正義感を燃やす性格で、人に害を加える鬼に対して憎悪を抱いている。6月18日に完結したアニメ『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』でも、そうした炭治郎の言動は変わらず、上弦の鬼・半天狗に激情をむき出しにする場面などによって視聴者を盛り上げていた。
「過剰に見えるほどの正義感こそが炭治郎の魅力であり、『鬼滅の刃』人気の秘訣でもあることは間違いないでしょう。ですがそうした言動に対して、拒絶反応を示す人も少なくありません。
鬼は人間目線では確実に悪の権化ですが、炭治郎がそこで正義を振りかざすことが違和感の理由になっているようですね。たとえ正義の側であっても、相手の存在を否定することは正義とは限らない…という矛盾があるからです。
炭治郎の言動を、正論で相手を追い詰めるロジカルハラスメント(ロジハラ)と捉え、揶揄する声もあるようです」(時事ライター)
たとえば下弦の伍・累戦では、炭治郎が相手との舌戦において「俺は間違ってない、取り消さない。間違っているのはお前だ」と自分の信念を貫きとおすシーンがあった。正しいかどうかはともかく、これは自分が絶対に正しいという考えがないと出てこない言葉だろう。
また、別の場面では無惨に対して「お前は存在してはいけない生き物だ」と言い放っていた。人類にとってどれだけ凶悪な相手であっても、その存在を全否定することには、人間特有のエゴや傲慢さを感じざるを得ない。
炭治郎と「正義マン」たち
炭治郎の正義は、「人間の命を奪う鬼は生きていてはいけない」という矛盾を抱えている。近年SNS上で増加している、いわゆる「正義マン」も炭治郎と同じタイプだ。
「正義マンとは、犯罪や社会のルールを逸脱するような行為に対して、裁判所に代わって正義を執行しようとする人々を指します。主な活動場所はSNS上ですが、時に暴走して直接的な攻撃を加える場合も珍しくありません」(同)
たとえば2020年4月には、コロナ禍でほとんどの店が休業を余儀なくされるなか、千葉にある駄菓子屋の店頭に「店を閉めろ」との張り紙が張られる騒動があった。同店はこの時点ですでに休業に入っていたのだが、義憤に駆られた人物の暴走により、店員が心に傷を負ったことが報じられている。
ほかには著名人の不倫騒動などが起きた際に、ここぞとばかりに誹謗中傷を行うのも正義マンならではの仕草だという。
「自分が正義で相手が悪という構図なら、何をしてもいいと考えるのが正義マンの特徴。絶対的な悪に対して正義の心を燃やす『鬼滅の刃』のストーリーは、そんな社会状況とぴったりかみ合っていました」(同)
そろそろ落ち着いてきた「鬼滅の刃」ブームだが、正義マンの活動も下火になっていくのだろうか。
文=「まいじつエンタ」編集部
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