
『ブラッククローバー』が「ブラックローバー」に…ジャンプ作家が出版業界の国語離れに警鐘 (C)PIXTA
どんな出版物にも誤植は付き物だが、『週刊少年ジャンプ』では近年その数が増加しているという疑惑がある。現在『逃げ上手の若君』を連載中で、過去に『魔人探偵脳噛ネウロ』や『暗殺教室』といったヒット作を描いていた、ジャンプ作家・松井優征も苦言を呈していた。
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ベテラン漫画家からの被害報告
松井は、「逃げ上手の若君」コミックス10巻において、誤植の被害を受けたことを明かしていた。
連載作家たちのコメントが掲載される「ジャンプ」の巻末ページにて、ある時、松井はダイエットの現状を報告。「7kg痩せて63kgまで来た」と順調な経過を綴るつもりだったそうだが、実際の紙面では「7kg痩せて73kgまで来た」と記載されてしまった。
ダイエットの報告のつもりが、ぽっちゃり疑惑を生んでしまう致命的な誤植に、松井は思わずツッコミを入れている。なお経緯としては、編集側が原稿をよく読まずに入力し、うっかり「6」を消した後、うろ覚えのまま修正した結果だという。
さらに松井曰く、漫画の本編でもこうした誤植が増えているらしく、「出版業界の国語離れ」を指摘していた。
ちなみに「逃げ上手の若君」に関しては、以前にも誤植で話題になったことがある。3月22日に発売された「ジャンプ」16号の巻末コメントページにて、作品名が『逃げ上手の“若者”』と表記される痛恨のミスがあったのだ。
謝罪文が掲載されるほどの事件も
実のところ雑誌の編集は外注スタッフが行うこともあるため、ジャンプ編集部のミスかどうかは分からない。ただ、近年の「ジャンプ」で誤植などの騒動が目立つようになったのも確かだろう。
たとえば最近では、6月19日発売の「ジャンプ」29号から始まった新連載『アスミカケル』の本編で派手な誤植があった。第1話目から格闘技の「スパーリング」がなぜか「スパークリング」となっているミスがあり、作者の川田は巻末コメントで「炭酸かな!」「コミックスで直します!」とツッコミを入れていた。
また7月3日発売の「ジャンプ」31号では、巻末コメントページで『ブラッククローバー』のタイトルが「ブラックローバー」とされてしまう誤植が。また同号では、『マッシュル -MASHLE-』の最終回がセンターカラーで掲載されたが、1ページ目に「巻頭カラー」と間違った見出しが入っていた。こちらはもはや誤植ではなく、編集ミスの領域だ。
さらに昨年12月には、『PPPPPP』を連載中だったマポロ3号の巻末コメントが、約2カ月前に載った別作者の巻末コメントと取り違えられる事件があった。
ツイッター上で公式に訂正とお詫びがあったが、その結果「コイルの質感が超良い」といったマニアックなポケモントークが、全世界に発信される仕打ちとなってしまった。
【お詫びと訂正】 pic.twitter.com/dAKIR4Wo0B
— 少年ジャンプ編集部 (@jump_henshubu) December 4, 2022
時には笑えない編集ミスもあり、2021年にはペンネームで活動していた『クーロンズ・ボール・パレード』の原作者・鎌田幹康の名前が、本名のまま掲載されてしまうという出来事があった。
なお編集ミスが目立つのは「ジャンプ」本誌だけではなく、同じ集英社の『ジャンプSQ.』でも誤植が頻発している。とくに『新テニスの王子様』は、あまりの誤字の多さに作者・許斐剛の体調を心配するファンが殺到。事態を重く見た許斐が、ツイッター上で声明を出すほどの事態になった。
昨日発売のジャンプSQ.1月号『新テニスの王子様』でキャラ名の漢字が間違って掲載されていました。原稿上で正しく書いた物が写植で間違われてしまい、大事なシーンなだけに何度も何度も原稿段階の文字を確認したのですが、写植段階のミスは作者も本誌を見るまでチェック出来ず修正しようがありません。
— 許斐剛 (@konomi_takeshi) December 2, 2022
週刊誌というメディアの性質からして、誤植をゼロにすることは難しいのだろうが、作家たちの信頼を損ねてしまわないか心配だ。
文=野木
【画像】
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