
『呪術廻戦』23巻(芥見下々/集英社)
『呪術廻戦』における五条悟は最強の呪術師であり、もっとも人気が高いキャラクターでもある。作中では華々しい活躍を繰り広げてきた印象が強いものの、実は冷静に考えると、さまざまな悲劇を巻き起こす元凶となっていた。
このままいけば、五条が作中最大の“戦犯”となる可能性も少なくない…。
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※『呪術廻戦』最新話までの内容に触れています
五条は現代最強と言われるほどの特級呪術師であり、呪術界の上層部と1人で渡り合えるほどの権限を持っている。しかしその反面、性格は飄々としており楽観的。この性格と立場の組み合わせが、最悪の結果をもたらすことになった。
代表的なのは、「渋谷事変」での顛末だろう。羂索の罠にかかり、「獄門彊」に封印された際、五条はなぜか慌てる様子を見せず、「なんとかなる」と余裕そうに呟いていた。それほどまでに「呪術高専」の仲間たちに全幅の信頼を寄せていたのかもしれない。
ところがそんな五条の予想は的中せず、「渋谷事変」では次々と仲間たちが死亡していくことに。大切な教え子のみならず、数えきれないほどの一般人も犠牲となった。さらにその後には、「死滅回游」によって日本中が混乱に陥っており、どう見ても“なんとかなった”結果ではない。
実は物語序盤から、五条の決断は裏目に出ていた。両面宿儺の指を飲み込んだ虎杖悠仁は、その危険性から死刑となる予定だったが、五条の独断によって命を救われている。これは一面的には正義に見えるものの、結果として多くの犠牲者を生むことになる決断だった。
また虎杖の育成に関しても、成功とは言いがたい。虎杖は当初、呪力が遅れて着弾する「逕庭拳」という技を使っていた。これは呪力コントロールの未熟さを逆に活かした技で、五条が「大きな武器になる」と評価していたことが印象的だ。
しかし、そこからすぐに「逕庭拳」に大きな欠陥があることが判明。東堂葵から特級呪霊には通じない技と一刀両断され、呪力コントロールを学びなおすことになる。結局、虎杖を本当の意味で強くしたのは、五条ではなく東堂だった。
羂索の台頭にも関わっていた五条の甘さ
楽観主義のみならず、情に流される甘さも五条の弱点だ。とくに青春時代を共に過ごした夏油傑が絡んだ時、その判断力は大いににぶる。
最初の過ちは、「呪術高専」の学生だった時代に起きた。
夏油が呪術師の世界を裏切り、行方をくらませた後に、五条は2人きりで再会を果たす。その時点で夏油は集落1つを壊滅させる重罪を犯しており、さらなる犯行を示唆していたが、五条は夏油を見逃している。
さらに、本編の前日譚にあたる『東京都立呪術高等専門学校』でも大きな失態が。夏油が倒れた後、五条は感傷なのか思いやりなのか、遺体の処理を家入硝子に任せなかった。その結果、夏油の体が羂索に利用されることになる。
こうして振り返ると、本編で起きた悲劇のほとんどに五条の行動が絡んでいたことが分かるだろう。それだけ呪術師の世界で重要な人材ということなのかもしれないが…。
現在連載中の本編では、「勝つさ」とうそぶいて宿儺との戦いに臨んでいるが、もし敗北すれば稀代の戦犯扱いは免れなさそうだ。そろそろ汚名を返上する大活躍を見せてほしい。
文=野木
写真=まいじつエンタ
■『呪術廻戦』23巻(芥見下々/集英社)