「ハンコ不要論」は本当に正しい? 加熱する“ハンコ叩き”に異論を唱える声も

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行政改革担当大臣・河野太郎氏が「脱ハンコ」を掲げたことも影響し、最近なにかと話題になるハンコ。決まりだからと特に考えず押してきた人も多いと思うが、本当にハンコが必要なのか、今にわかに議論が巻き起こっている。

先日放送された『クローズアップ現代』(NHK総合)では、「どうなる? ハンコ社会ニッポン」と題し、ハンコをめぐる日本のさまざまな事例が取り上げられた。まず、最先端の〝ハンコレス〟が進む自治体として紹介されたのが『福岡市』だ。同自治体では200以上の手続きが電子化され、住民が窓口に行かなくてもパソコンやスマホから手続きを行えるという。福岡市の高島宗一郎市長は、「慣習である認印はなくしても問題ない。しかし、本人証明のいる手続きには実印が必要で、こちらは今後も残っていく」とコメントしていた。

またハンコを電子化する取り組みとしては、『サントリー』が紹介されることに。同社では電子契約の採用によって、年間6万時間の労働時間を削減できる見込み。しかし、取引先がハンコを使用している場合には電子契約が使用できないため、現在は社内での手続き簡素化を主としているよう。

「脱ハンコ」の取り組みだけでなく、番組内ではハンコを使用するメリットも紹介。複数人がしっかりと書類を確認してからハンコを押すという安心感や、ハンコを押すために対面することをコミュニケーションの機会として捉える意見などが取り上げられた。

ハンコのメリットをめぐる描写に、多くの視聴者が疑問を抱いたようで、《まともな企業でもこのレベルか…政府主導でハンコレスを進めないと実現出来ないね》《正直こんな会社にいなくてよかった。ハンコは嫌いです》《ハンコを押してもらう際のコミュニケーションって、タバコ休憩と同じ屁理屈だ》《前時代的で血の気が引くレベル》など手厳しい意見が飛び交っている。しかし、一面的な〝ハンコ叩き〟は本当に正しいのだろうか?

ハンコでヒューマンエラーを防止できる?

ネット上では「ハンコ不要論」が目立つものの、他方では「ハンコが必要」と考える人々も存在するようだ。ネット上では《ハンコを押す際に確認を行うのは貴重な機会。問題なのは誰が何を確認するのかはっきりしていないことにある》《承認する人は一人でいいよ。でも検討や相談は分担して行うべき》《沢山のハンコはいらない! 一人が責任をもって決済するのは大事》といった意見が上がっている。ほとんどのハンコ支持者が、ハンコを大量に押さなければならない現状を批判している点は注目に値するだろう。

また具体的なメリットとしては、ハンコを押すというアクションを一段階置くことで、「よりしっかりと内容を確認できる」点が挙げられる。重要なのは、何を確認し、誰が責任をもってハンコを押すのかはっきりさせるべきだということだ。

その一方で、ビジネスや手続き上の道具としてだけではなく、アニメの「キャラハンコ」といったグッズとしての価値を訴える人も。さまざまな視点から考えてみても、ただの慣習として残っているハンコや、責任なく形式的に押されるハンコは不要というしかない。

今後は実印やキャラグッズなど、ハンコを活かせる場所を見極めて使用していくことが求められるはず。人間だけでなく、ハンコもまた多様性の時代を迎えつつあるのかもしれない。

文=山野あおば

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