「ジェンダー」「多様性」が許せない? りゅうちぇるの“リベラル”発言が反発を招いたワケ

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昨今、世間は「ジェンダー」や「多様性」の話題で持ちきり。とはいえ、必ずしもポジティブなニュースとは限らず、炎上騒動となってしまうこともあるようだ…。11月29日放送の『サンデー・ジャポン』(TBS系)では、タレント・りゅうちぇるがジェンダー問題に切り込み、ネット上で大きな反発を招いている。

りゅうちぇるは、人形のCMに女の子しか起用されないことや、レンジャーショーのピンクが絶対に女の子であることを問題視しているそう。彼は「無意識に子どものうちから、メディアからの押し付けみたいなのがあるから、人と違うことを『君おかしいよ』という子になってしまい、そのまま大人になると保守的になる」と語り、メディアによっておもちゃと性別が結びつけられている現状を批判した。

さらに「人の価値観が子どものうちから『これが当たり前』と刻みこまれてしまう。だからこそ、おもちゃのCMでは性別を超え、年齢も超えて発信して欲しい」と、社会的に性別が形作られるジェンダーの問題に踏み込んだトークを展開するのだった。

子どもが自由に生きられる社会に向けた提言に、ネットでは《おもちゃもそうだけど、女子、女性もの=ピンクって考え方は本当にやめてほしい》《女の子はかわいい、男の子はかっこいいというイメージがあるのは別にいいと思う。でも女の子がかっこいいを選んでもいいし、男の子がかわいいを選んでもいい。必要なのは選べる自由だよね》《プラレール好きな女の子や、ピンク好きの男の子が自分はおかしい?って悩んでしまうのはたしかに問題》といった賛同の声が上がっている。

「ジェンダー」について誰も理解してない?

その一方、りゅうちぇるの発言がジェンダーや、多様性に関する提言としてメディアで報じられたことで、反感を抱く人も現れたようだ。《個人的にジェンダーを押しつけて、「ジェンダーに理解がある=いい、正しい」っていう風潮が苦手》《無理矢理複雑に考えすぎ》《多様性を認めるのは大事だけど、性をなくせ、区別をなくせっていうのは違うと思う》《CMなんて売れる層に向けて作ってるから仕方ないじゃん。それが商売》《何でもジェンダー問題にするなよ》と猛反発を招いていた。

もちろん、りゅうちぇるの提案は、性差のない社会を作ることではない。むしろメディアが性差を押し付けることを否定し、自分の好きなおもちゃを選べる社会を肯定するものだった。しかし議論の繊細な意図は伝わらず、りゅうちぇるがジェンダーレスを押し付けているという誤解が生じてしまったようだ。中には《マイノリティに忖度しすぎ》といった意見もあがっていたが、実際にはマイノリティだけでなく「誰もが生きやすくなる社会」に向けた提言だと言えるだろう。

この件に限らず、ジェンダーや多様性の議論では〝誰が発言するか〟によって風向きが大きく変わる。たとえば報道・情報番組のコメンテーターとして知られるモーリー・ロバートソンも、ジェンダー問題について一家言ある人物。今年9月には自身のツイッターにて、テレビ番組が〝若い女性を『昭和のオヤジ目線』でキャスティングする傾向〟を批判し、「#MeToo以後、本当に世間の価値観は変わってきています。テレビは追いつく必要がある」と発言していた。

また、今後のテレビ出演ではイジメや決めつけ、ジェンダー差別などに抵抗していくことを表明。同ツイートは29万件以上の「いいね」がつき、多くの人がモーリーの考えを支持している。

モーリーはりゅうちぇるの発言と比べて、あからさまな「女性蔑視」や「性的搾取」を意識しているという違いはある。しかし同じようにジェンダー問題に言及しているにも関わらず、りゅうちぇるほど理不尽な反発は受けていなかった。

ジェンダーという言葉はよく耳にするものの、世間では誤用していたり文脈をよく確認せずに反発しているケースが多い。意味をよく知らない…という人は雰囲気に流されず、しっかりと調べた上で発言するのがスマートな振る舞いだろう。

文=大上賢一

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