「抱かれたくない男」はエロい!? 女の欲望を赤裸々に描いた問題作『女の子が抱いちゃダメですか?』

『女の子が抱いちゃダメですか?』1巻(ねじがなめた/小学館)

「女を抱く」という表現がある。実際に夜の営みをする際には、男女はお互いに抱き合うもの…なんてことは、誰もがわかっているのだろう。わかっていてなお、男は「女を抱く」と言うし、女は「男に抱かれる」と口にしてしまう。性欲はなぜ一方通行なのだろうか?

筆者がぼんやりと抱いていた疑念がより明確になったのは、とあるマンガを読んだことがきっかけだった。マンガのタイトルは『女の子が抱いちゃダメですか?』。直球にもほどがあるが、言うまでもなく〝女が男を抱く〟ことをテーマとした作品だ。

主人公の梶谷美月は、どこにでもいるような24歳のOL。彼女が付き合い始めた〝篠宮さん〟は、有名商社に勤めるエリート。その上、イケメンで優しい性格という非の打ち所がない理想の彼氏に見える。しかし、彼氏からボディータッチや、紳士的なエスコートを受けるたびに、美月は強烈な違和感を抱いてしまう。今まで付き合った男性相手にも同じことが起きていたようで、3カ月で破局するのがお決まりのパターンとなっていた。

ところが今回の彼氏は、過去の男たちとは違うらしい。篠宮は事あるごとに美月をリードし、男の威厳を示そうとする。にも関わらず、精神的なトラウマによって最後の一線を決して超えられないのだ。そしてそんな篠宮の〝情けない〟姿を見ると、美月は自分の中の何かに火が付くのを感じる…。

美月は受け身ではなく、自分から働きかけることでしか満足できない体質。作中でそのことを自覚した彼女は、「普通ではない」と不安を覚える。とはいえ同作を読んだ女性読者の多くが《性癖に刺さった》と感想を呟いているところを見るに、美月の欲望は決して変わったものではない。むしろ筆者を含め、口に出しにくいだけで同じような心の疼きを感じたことがある人は多いはずだ。

拒絶すればするほど際立つ“男のいやらしさ”

それより気になるのは、篠宮が美月に抱かれることを徹底的に拒絶する点。まんざらでもない表情を浮かべているくせに、彼は決して美月に身をゆだねようとはしない。そして発される、「俺にもプライドがあるんだ」という決まり文句。あまりにもありふれた反応だからこそ、篠宮の人物像にはリアリティーがある。