『君の名は。』の悲劇が再び?「鬼滅の刃モドキ」の映画が増えるという未来予想図

『鬼滅の刃』1巻(吾峠呼世晴/集英社)

まさに社会現象と呼べるほどの大ブームを巻き起こしている『鬼滅の刃』。今年10月に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は興行収入300億円を突破し、日本映画史に残るヒット作となった。そんな鬼滅ブームの真っただ中、一部では日本映画界への〝悪影響〟を懸念する声もあがっているようだ。

話題の中心となっているのは、今月ツイッター上に投稿されたとある意見。投稿者は2016年に劇場アニメ『君の名は。』が大ヒットした後、しばらく同じような作風の映画が量産されていたことを揶揄。今後は「鬼滅の刃」のような作品でなければ、スポンサーが企画を通してくれなくなる…という予想を語っていた。

この意見に多くの人が共感を覚えたようで、ネット上では《全く否定できない。アニメを金儲けの手段としか見れん人間はいつもそう》《かなしいけど、わかってしまう》《たしかに1つの作品が市民権を得ると、同じ質感の作品が増える気がする》《そんなんだから大ヒット作の後には鑑賞意欲の湧かない作品ばっか続くんですね》といった声が続出。

また、《それこそジブリっぽいアニメが作られまくった過去が証明している》《一時期エヴァみたいなアニメばっかりだったなぁ》《まさにスター・ウォーズ現象だね》などと、「君の名は。」以前の流行を振り返る声も上がっている。

ポスト「鬼滅の刃」の映画業界はどうなる?

そもそも「君の名は。」の流行によって、〝二匹目のドジョウ〟を狙った作品はどれほど増えていたのだろうか。まず名前があがるのは、「君の名は。」と同じプロデューサー・川村元気が制作に関わった2017年の『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』だろう。アニメオリジナルではないが、タイムリープもののラブストーリーで、あまりにも公開タイミングがドンピシャだと言える。

同じようにSFチックな設定と、少年少女の恋愛を組み合わせた劇場アニメとしては、『HELLO WORLD』や『空の青さを知る人よ』といった作品が。そのほか、シンプルに題名が類似したものとしては『きみの声をとどけたい』や『きみと、波にのれたら』、『君は彼方』といった作品も挙げられるだろう。

とはいえ、こうしてタイトルを並べてみるとヒット作の少なさが気になるところ。ほとんどはスポンサーに企画を通すため、「君の名は。」をうわべだけ模倣したものでしかない…と邪推する気持ちも湧いてくる。もちろん、制作時期を考えて、偶然〝後出しジャンケン〟になってしまった作品もあるだろう。

もし今後〝鬼滅っぽい〟アニメ映画が出てくるとしても、作品自体の質がよくなければ売れることはないと思われる。「君の名は。」ブームの失敗を繰り返さないよう、制作陣は今一度気を引き締めた方がいいかもしれない。

文=大上賢一
写真=まいじつエンタ

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