『M-1』ファイナリスト9割に共通点! 第七世代の次は「ユーチューバー芸人」がブレイクする説

(C)PIXTA

近年稀に見る大接戦となり、多くのお笑いファンたちを沸かせた12月20日放送の『M-1グランプリ2020』(テレビ朝日系)。番組には個性豊かな全10組のファイナリストが登場したが、彼らには〝ユーチューバー芸人〟という共通点があったことをご存知だろうか?

『ニューヨーク』に『おいでやすこが』、『見取り図』…いずれも芸風・出自がバラバラの芸人たちに見えるかもしれない。しかし実はこの10組、ほぼ全てがコンビあるいは個人でYouTubeチャンネルを運営しているのだ。

コンビでチャンネルを持っているのは、なんと『錦鯉』と『マヂカルラブリー』を除く10組中8組。また「マヂカルラブリー」も、ボケを担当している野田クリスタルは個人名義でYouTubeチャンネルを運営している。つまりほぼ全てのコンビが、何かしらの形でYouTubeに関わっているという状況だ。

芸人とYouTubeの密接な関係は、M-1出場者にかぎった話ではない。『かまいたち』や『ダイアン』といった中堅芸人は、次々とYouTubeで頭角を現している。また8月22日には『ゴッドタン』(テレビ東京系)にて、『YouTube芸人サミット』と題した特集が組まれたことも。ユーチューバー芸人たちが業界内外で存在感を増しているのは間違いない。

最近の流行りは「ゆる身内感」?

かつてはユーチューバー芸人というと、カジサックや中田敦彦といった企画やキャラ付けをしっかりと作り込んだ芸風が王道だった。しかし、今のユーチューバー芸人はむしろその逆。ひたすら自分の趣味に没頭している姿や、仲の良い先輩・後輩芸人とただ喋るだけといった、〝ゆるいYouTube運営〟によって人気を博している。

たとえば今年M-1ファイナリストに選ばれ、前述した「ゴッドタン」の「YouTube芸人」特集にも出演しているニューヨークの『ニューヨーク Official Channel』は最たる例だ。彼らの人気企画である「日本一詳しい芸人名鑑」は、『さらば青春の光』や『コロコロチキチキペッパーズ』、『鬼越トマホーク』といった仲の良い面々について、身内しか知らない裏話や暴露話を延々と繰り広げるというもの。さらに「吉本芸人〇〇ランキング」という企画では、「吉本イチのイイ女やイイ男は誰か」や「貯金額が一番高いのは誰か」などを、2人が好き勝手にひたすら話し合っていく。

本来であれば、芸人同士の酒の席でしか話題にならなそうな内輪ネタのオンパレード。だが結果としては《この人とこの人って実はすごい仲が良かったんだ!》《あの芸人って、テレビでは腹黒キャラなのに裏では意外とイイやつじゃん》など、ファン心をくすぐられる人が続出し、チャンネル登録者数が急増する結果となった。

さらにもう1組、興味深いユーチューバー芸人が存在する。今年テレビ出演が急増した、サーヤとニシダからなる男女コンビ『ラランド』だ。彼らが運営する『ララチューン』という名前のチャンネルは、現在登録者8万人以上。メインの2人の会話だけでなく、YouTubeのコメント欄も駄弁りに参加する「広い身内感」が特徴だ。

たとえば、遅刻や留年といったクズエピソードが多いニシダへの悪口をサーヤがコメント欄で募集。その悪口を紙に書いて、2人が神経衰弱を行うという企画が存在する。またニシダがYouTubeの収録に遅刻した時には、その遅刻の理由をコメント欄にて予想してもらい、当てた人には賞金を渡すという企画も。いずれもYouTubeにおける芸人と視聴者の距離感の近さを利用しているのがポイントだ。サーヤと同じ目線でニシダをイジり、自分自身も「ラランド」のメンバーになったかのような楽しみ方ができる。

さて、ここまで新しいタイプのユーチューバー芸人を紹介してきたが、今後はさらなる新展開が生まれる可能性も高い。近頃の芸人ファンには、「ネタは見たことがないけど、トークの映像はよく見ている」という逆転現象が多発しているようなのだ。

「かつてはネタさえよければ売れるはずだったのに、今ではネタもトークも上手くなければテレビで売れない」と、芸人が嘆く場面は見たことがあった。しかしYouTubeという新たなメディアの開拓によって、近い将来「ネタはやらないがトークだけで売れる」芸人も、もしかしたら出てくるかもしれない。

コロナ禍で劇場も休館することが多く、芸人たちが舞台に上がる機会も少なかった2020年。しかし、かえってこのピンチがユーチューバー芸人たちにとってはチャンスになった可能性はある。ステイホームが続く昨今、M-1で気になった芸人がいたらYouTubeチャンネルを検索して、新しい一面を覗いてみるのもオススメだ。

文=富岳良

【画像】

SergeyMironov / PIXTA

【あわせて読みたい】